ヒトや家畜に感染するオルソブニャウイルスに近縁なベラゴドゥウイルスの分離

要約

2020年に宮崎県の牛舎で採集されたヌカカから、世界で2例目のベラゴドゥウイルス(Balagodu virus;オルソブニャウイルス属)を分離・同定した。同ウイルスは、その分類学的な近縁性から牛の異常産で問題となるオルソブニャウイルスの遺伝子検査での鑑別が必要となる。

  • キーワード : アルボウイルス、媒介節足動物、ヌカカ、国内初分離、次世代シーケンス解析
  • 担当 : 動物衛生研究部門・越境性家畜感染症研究領域・疫学・昆虫媒介感染症グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

2020年に宮崎県の牛舎で採集されたヌカカから分離されたウイルスは、国内でこれまで報告されたウイルスとは異なっていた。また、分離ウイルスは、牛の異常産の原因となるアカバネウイルスなどと同じシンブウイルスグループに分類されるため、検査現場での正確な判別が必要になる。分離ウイルスの正確な同定を実施し、類似ウイルスとの区別等、検査精度の向上に役立てるため、次世代シーケンサーにより全ゲノム解析を実施し、その遺伝学的性状を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 分離ウイルス(MZ-2/C/20)は3本のRNA分節ゲノムを有し、それぞれの分節(S、M、L)がオルソブニャウイルス属ベラゴドゥウイルス(Balagodu virus)の対応する分節と高い塩基配列の一致(93~97%)を示すことからベラゴドゥウイルスであることを同定し、同ウイルスの完全長ゲノム配列を世界で初めて報告する。分子系統解析により、ベラゴドゥウイルスはシンブウイルスグループのうち、人、家畜、野生動物での感染が確認されるクレードAに分類される。また、本成果は同ウイルスの完全長ゲノム配列の初めての報告である(図1)。
  • ベラゴドゥウイルスは、1963年にインド南部で野鳥(インドアカガシラサギ)からの分離が1例(PB1株)報告されているだけであり、本事例は世界で2例目の分離となる。
  • 国内の検査現場で多用されているS RNA分節の配列を標的としたグループ特異的RT-PCRでは、ベラゴドゥウイルスは牛の異常産に関与するAkabane virus(アカバネウイルス)等のシンブウイルスグループに属するオルソブニャウイルスと同様に検出される(図2)。

成果の活用面・留意点

  • ベラゴドゥウイルスと近縁のウイルスは、人や野生動物への感染が報告されていることから、同ウイルスの人や家畜、野生動物の疾病との関連の有無を継続的に監視する必要がある。
  • 家畜保健衛生所などの診断施設において、アカバネウイルス等、検査対象となっている他のシンブウイルスグループのオルソブニャウイルスと、遺伝子検査の際の鑑別に留意する必要がある。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 農林水産省(戦略的プロジェクト研究推進事業:家畜の伝染病の国内侵入と野生動物由来リスクの管理技術の開発)
  • 研究期間 : 2020~2023年度
  • 研究担当者 : 梁瀬徹、室田勝功、須田遊人、本田真由美(宮崎県家保)、瀬戸山博則(宮崎県家保)、鍋倉良輔(宮崎県家保)
  • 発表論文等 : Honda M. et al. (2024) Virus Genes 60:325-331