牛の異常産に関連するオルソブニャウイルスの新規遺伝子再集合体の出現

要約

2022年に沖縄県で分離されたウイルスは、オルソブニャウイルス属のシャモンダウイルスとサシュペリウイルスの間での遺伝子再集合体と確認され、欧州で反芻獣の異常産の流行の原因となったシュマレンベルクウイルスと遺伝学的に類似していたことから、同ウイルスとの鑑別が必要である。

  • キーワード : アルボウイルス、媒介節足動物、ヌカカ、遺伝子再集合、異常産
  • 担当 : 動物衛生研究部門・越境性家畜感染症研究領域・疫学・昆虫媒介感染症グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

オルソブニャウイルスは、3分節(S、M、L)のゲノムを有し、近縁のオルソブニャウイルスの間では同一細胞へ同時に感染した際に、遺伝子再集合が起こることが知られている。遺伝子再集合は、ウイルスの病原性、宿主域、抗原性に影響を与えることからその出現の監視が必要となる。国内には、シンブウイルスグループの複数のオルソブニャウイルスが気流によって運ばれた感染ヌカカによってもたらされており、それらによる牛の異常産(流産・早産・死産・先天異常子の分娩)の発生が相次いでいる。また、これらのウイルスは分布域が重なり、かつ遺伝学的に近縁であることから、遺伝子再集合体の出現が懸念され、継続的な監視と早期の検出が必要になっている。

成果の内容・特徴

  • 沖縄県与那国島で飼養されていた牛の血液から分離されたウイルス(ON-2/P/22およびON-3/P/22)の全ゲノム解析の結果は、SとL RNA分節がシャモンダウイルス、M RNA分節がサシュペリウイルスに由来することを示す(図1、2)。すなわち、宿主動物もしくは媒介節足動物への同時感染により、両ウイルスの間で遺伝子再集合が起こったことを示唆している。遺伝子再集合体の抗原性はサシュペリウイルスと同じであるが、病原性や複製に関与する遺伝子は、シャモンダウイルスと一致する。
  • 遺伝子再集合体の分節ゲノムの組み合わせは、2011年に欧州で出現し、牛やめん羊などの異常産の大流行の原因となったシュマレンベルクウイルスと同じであり、自然界でシュマレンベルクウイルスに似た遺伝子再集合体が出現することを世界で初めて示した(図1)。シュマレンベルクウイルスによる異常産の流行は欧州で継続しており、我が国や周辺地域への侵入が危惧される。
  • 我が国で実施されているアルボウイルスに対する侵入監視により、遺伝子再集合体の早期の検出と解析が可能になっていることが示された。

成果の活用面・留意点

  • シャモンダウイルスとサシュペリウイルスは、牛の異常産の原因となることが示唆されており、遺伝子再集合により、病原性の亢進や伝播力の高まりが懸念され、継続的な監視が必要である。
  • 欧州やその周辺地域でまん延しているシュマレンベルクウイルスと、今回のように遺伝再集合により出現した類似のウイルスを鑑別する検査施設などで利用可能な検査方法の開発が重要である。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 農林水産省(戦略的プロジェクト研究推進事業:家畜の伝染病の国内侵入と野生動物由来リスクの管理技術の開発、包括的レギュラトリーサイエンス研究推進委託事業:新たな感染症の出現に対してレジリエントな畜産業を実現するための家畜感染症対策技術の開発)
  • 研究期間 : 2022~2024年度
  • 研究担当者 : 梁瀬徹、室田勝功、小西美佐子、池田里奈、友知久幸(沖縄県家衛試)、銘苅裕二(沖縄県家衛試)
  • 発表論文等 : Tomochi H. et al. (2024) Arch. Virol. 170(2):44