牛胎子脳神経由来培養細胞におけるアカバネウイルスの特徴的な細胞障害性・増殖性

要約

アカバネウイルスは牛の流産、死産や水無脳症等を呈する先天異常子の出産等のいわゆる牛異常産の原因となる。感染牛胎子の病態発現部位である牛胎子脳神経由来の培養細胞を用いることで、アカバネウイルスが近縁のウイルスと比べて特徴的なウイルス性状を持つことを明らかにする。

  • キーワード : アルボウイルス、アカバネウイルス、牛胎子脳神経由来培養細胞、牛異常産
  • 担当 : 動物衛生研究部門・動物感染症研究領域・ウイルスグループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

オルソブニャウイルス属のアカバネウイルスは、牛胎子に感染し、流産、死産や、関節弯曲症や水無脳症を呈した先天異常子の出産等、いわゆる異常産を引き起こす。アカバネウイルスと同じシンブウイルスグループに属する、アイノウイルス、ピートンウイルス、サシュペリウイルス、シャモンダウイルスも牛異常産への関与が知られているが、これらのウイルスの中で、わが国ではアカバネウイルスが最も大きな被害をもたらしている。また、アカバネウイルスには5つの遺伝子グループがあり、そのうち国内ではグループ1、2が検出されている。疫学情報からグループ1に属するウイルスは、生後感染による非化膿性脳脊髄炎を引き起こすことが知られている。アカバネウイルスの分離培養には、一般的にハムスター由来細胞(HmLu-1細胞)等が用いられるが、これらの培養細胞を使用した研究では、ウイルス種間や遺伝子グループ間でのウイルス性状の違いは明らかではない。本研究では、アカバネウイルスの病態発現機序の解明のため、宿主の病態発現部位である牛胎子脳神経由来の培養細胞を用いることで、近縁のウイルスと比べてアカバネウイルスが特徴的なウイルス性状を持つことを明らかにする。

成果の内容・特徴

  • アカバネウイルスや、近縁ウイルスであるアイノウイルス、ピートンウイルス、サシュペリウイルスおよびシャモンダウイルスはいずれも牛胎子脳神経由来培養細胞に感染する。
  • アカバネウイルスは牛胎子脳神経由来培養細胞に感染すると、他の近縁ウイルスでは認められない細胞障害性を、感染ウイルス力価依存的に示す(図1)。細胞障害性に関しては、アカバネウイルスのグループ1と2では差異は認められない。なお、HmLu-1細胞においては、いずれのウイルスの感染でも細胞障害性が認められる。
  • アカバネウイルスの遺伝子グループの違いによって、牛胎子脳神経由来培養細胞での増殖性に差異が認められる(図2)。主に異常産を引き起こすグループ2のウイルス株は、主に生後感染による非化膿性脳脊髄炎を引き起こす傾向があるグループ1に属するウイルス株と比較して、牛胎子脳神経由来培養細胞での増殖性が高い。

成果の活用面・留意点

  • 牛胎子脳神経由来培養細胞を用いることで、アカバネウイルスに特徴的なウイルス性状が明らかになり、これはアカバネウイルスの病態発現機序の解明に役立つ。
  • 牛胎子脳神経由来培養細胞を用いた解析系は、オルソブニャウイルス属のウイルス性状の解明に寄与するとともに、病原性の解析への利用が期待できる。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 文部科学省(科研費)
  • 研究期間 : 2019~2023年度
  • 研究担当者 : 須田遊人、室田勝功、白藤浩明、田中省吾、梁瀬徹
  • 発表論文等 : Suda Y. et al. (2024) Arch. Virol. 169:133