要約
成牛もヨーネ菌に感染するが、感染初期の排菌は若齢期の感染に比べ散発的で、臓器での菌増殖及び病変形成は限定的である。また、潜伏感染牛はヨーネ菌の再感染に対して抵抗性を示し、子牛期の感染で誘起された獲得免疫によるものと考えられる。
- キーワード : ヨーネ病、成牛、排菌、細胞性免疫応答、再感染
- 担当 : 動物衛生研究部門・動物感染症研究領域・細菌グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
牛ヨーネ病は、ヨーネ菌の感染による慢性消化器感染症で、有効なワクチンや治療法がなく摘発淘汰により清浄化を進めている。ヨーネ菌に対する感受性は月齢により異なることが知られており、哺乳期の子牛が最も高く、加齢とともに低下すると考えられている。このことから、発生農場における清浄化対策は、感染牛の摘発淘汰に加え、特に子牛への対策に重点が置かれている。一方で、月齢に関係なく排菌牛から成牛を含む同居牛へ水平感染するリスクも指摘されており、さらに、発生農場では子牛の時期に感染し、潜伏感染のまま排菌、発症に至らず経過している個体も飼育されていると考えられる。効果的なヨーネ病対策を講じるために、成牛における感染リスクを評価することが求められており、本研究では、子牛と成牛の初感染時、さらに成牛の再感染時における感染初期(6か月間)の排菌及び免疫応答の推移を解析する。
成果の内容・特徴
- ホルスタイン種6頭を2頭ずつ3群に分け、それぞれ成牛初感染群、成牛再感染群、子牛感染群とする。ヨーネ菌感染実験の概要を図1に示す。
- 子牛期/成牛期いずれにおいても、ヨーネ菌接種後2週目に、多くの牛が糞便の遺伝子検査で陽性となるが、接種材料が糞便中に排出された通過菌と考えられる(表1)。糞便中への排菌は、子牛期の感染では接種から4か月程度断続して観察されるのに対し、成牛初感染群では散発的であり、成牛再感染群では通過菌を除いて認められない(表1)。
- 成牛初感染群の2頭は、子牛期の感染群と同様に、接種後約3か月でIFN-γ検査が陽転し、細胞性免疫の応答が確認される(表2)。また、成牛再感染群及び子牛感染群の4頭は、子牛期の感染で惹起された細胞性免疫応答が成牛になっても維持されている(表2)。
- 成牛初感染群の腸管及び腸間膜リンパ節からヨーネ菌の遺伝子が検出され、軽度の肉芽腫病変を認める(図2)。しかし、既報の子牛での感染実験と比べると遺伝子量が少なく、組織病変の形成は限定的である。また、成牛再感染群の2頭は、2歳3か月齢の時点で排菌、発症を認めず潜伏感染であったと考えられるが、病理組織学的検査において著変を認めず、接種したヨーネ菌は定着・増殖することなく排除されたと推測される。
成果の活用面・留意点
- 成牛はヨーネ菌に対する抵抗性が高い可能性が示唆されたものの、将来的に病態が進行し発症へ至るかどうかについては、さらに長期的な観察が必要である。
- 成牛へのヨーネ菌感染及び再感染のリスク評価に資するデータが得られ、特に発生農場において、より有効な清浄化対策を講じることが可能となる。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金
- 研究期間 : 2021~2024年度
- 研究担当者 : 川治聡子、田中省吾、上野勇一、永田礼子、泉一宏(北海道家保)
- 発表論文等 : 泉ら(2025)日本獣医師会雑誌、78:e15-e21