豚のマイコプラズマ肺炎抵抗性を判別するDNAマーカー

要約

豚のFCGR2B、IFI16およびSTING1遺伝子の一塩基多型は、マイコプラズマ肺炎に対する抵抗性と関連し、豚集団の肺炎罹患率を低下させるDNAマーカーとして利用可能である。

  • キーワード : 豚、マイコプラズマ肺炎、抗病性、免疫、DNAマーカー
  • 担当 : 動物衛生研究部門・衛生管理研究領域・衛生管理グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

養豚業において肺炎・下痢等の感染症による経済的被害は甚大である。豚のマイコプラズマ肺炎(MPS)の原因であるMycoplasma hyopneumoniaeはほとんどの養豚場に常在しており、ワクチンによる対策がなされているものの、その感染防御効果は低く、個体間で効果に差があることも知られている。このワクチン応答の個体差は、病原体に対する遺伝的抵抗性/感受性の違いを反映している可能性があり、肺炎に対する抵抗性が高い豚を種豚として選抜することで、豚集団の肺炎罹患率を低下させることが可能になると考えられる。
本研究では、一般農場で飼養される三元交雑豚について、MPSの特徴的な病変である肺葉の肝変化の程度(病変スコア:最小0~最大55)をと畜場で測定し、免疫関連遺伝子の一塩基多型(SNP)と病変スコアとの関連を統計的に明らかにすることで、MPSに対する抵抗性/感受性に影響する遺伝子多型の同定およびDNAマーカーの開発を行う。

成果の内容・特徴

  • 2016Bおよび2019Cの農場において、抗体重鎖の認識に関わるFc-gamma receptor II B(FCGR2B)遺伝子のSNP(rs320243268およびrs331355666)が抵抗型(TA)の遺伝型を持つ豚は、感受型(CC)しか持たない豚と比較してMPSの病変スコアが低下する(図1A)。
  • 2019Aおよび2019Cの農場において、病原体由来DNAの認識に関わるInterferon gamma-inducible protein 16(IFI16)遺伝子のSNP(rs80915627)が抵抗型(T)の遺伝型を持つ豚は、感受型(G)しか持たない豚と比較してMPSの病変スコアが低下する(図1B)。
  • 2019Cの農場において、病原体由来DNAの認識に関わるStimulator of interferon response cyclic guanosine monophosphate-adenosine monophosphate interactor 1(STING1)遺伝子のSNP(rs81218215)が抵抗型(A)の遺伝型を持つ豚は、感受型(T)しか持たない豚と比較してMPSの病変スコアが低下する(図1C)。
  • FCGR2BおよびIFI16遺伝子の抵抗型の遺伝型は、ランドレース種に比較的多いがデュロック種にはほとんど存在しない。対照的に、STING1遺伝子の抵抗型の遺伝型は、デュロック種に比較的多いがランドレース種には全く存在しない(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 本研究は、免疫関連遺伝子であるFCGR2B、IFI16およびSTING1の豚集団におけるSNPが、一般農場で飼養される三元交雑豚のMPSに対する抵抗性/感受性と関連することを示している。
  • FCGR2B-rs320243268.rs331355666、IFI16-rs80915627およびSTING1-rs81218215の遺伝型を判別することで個々の豚の抗病性の評価が可能であり、抵抗型の遺伝型を持つ豚を選抜して三元交雑豚を生産することにより、生産現場におけるMPS罹患率の低下が期待される。
  • FCGR2B-rs320243268.rs331355666およびIFI16-rs80915627はランドレース種の抗病性改良に、STING1-rs81218215はデュロック種の抗病性改良への利用が期待される。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(イノベーション創出強化研究推進事業)
  • 研究期間 : 2020~2024年度
  • 研究担当者 : 新開浩樹、鈴木香澄(岐阜県畜研)、伊藤智仁(家畜改良事業団)、吉岡豪(岐阜県畜研)、竹之内敬人、北澤春樹(東北大学)、上西博英
  • 発表論文等 :
    • 新開ら、特願(2025年3月25日)
    • Shinkai H. et al. (2024) Genes 15:1103