高病原性鳥インフルエンザの遺伝子検査を簡便にする簡易核酸抽出用試薬の開発

要約

開発した前処理試薬は、検査材料と常温で10分間混合するだけで、高病原性鳥インフルエンザの遺伝子検査に用いる核酸試料を調製できる。都道府県の病性鑑定施設で使用されているマルチプレックスリアルタイムRT-PCR等と併用することで検査のさらなる省力化と迅速化に貢献できる。

  • キーワード : 高病原性鳥インフルエンザ、核酸精製不要、リアルタイムRT-PCR法、省力化
  • 担当 : 動物衛生研究部門・人獣共通感染症研究領域・新興ウイルスグループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)は、家きんに対して高い致死性と強い伝播性を有し、家畜伝染病に指定されている。原因ウイルスのHA亜型はH5とH7に限られるため、遺伝子検査による迅速なウイルス検出とHA亜型の判定がまん延防止には重要である。近年の世界的な流行を背景に、我が国においても発生件数の増加や警戒期間の長期化が顕著となり、同一県内の複数農場で同日に発生が確認されるケースもみられる。一方、検査や防疫措置の中心を担う家畜防疫員の数は限られており、検査担当者の作業負担軽減に資する省力的な検査手法の開発が常に求められている。
今回開発した前処理試薬は、検査材料と混和し、10分間静置するだけでリアルタイムRT-PCR等に直接利用可能な核酸試料を取得できる。これにより、鳥インフルエンザウイルス遺伝子の検出およびHA亜型の判定に要する時間を従来よりも50~60分短縮できる。

成果の内容・特徴

  • 本前処理試薬は、家きんの気管または総排泄腔スワブと混和後、10分間静置するだけで、高病原性鳥インフルエンザの遺伝子検査に必要な核酸試料を得られる(図1)。
  • 現行の核酸抽出手法(カラム精製法)では必須となる、シリカメンブラン等の担体への核酸の結合、洗浄、溶出といった煩雑な工程を省略できる。そのため、多検体処理時に懸念される試料の交差汚染や検体の取り違えなどの誤操作リスクを低減できる(図1)。
  • 本前処理試薬で調製した核酸試料は、国が定める特定家畜伝染病防疫指針に基づき運用されるマルチプレックスリアルタイムRT-PCRやコンベンショナルRT-PCRに利用でき、リアルタイムRT-PCRの全工程は概ね120分で完了できる。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : 都道府県家畜保健衛生所、動物検疫所、動物医薬品検査所等。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 全国。
  • その他 : 開発した前処理試薬を用いたスワブからの核酸の簡易抽出法は、国が定める「高病原性鳥インフルエンザ及び低病原性鳥インフルエンザに関する特定家畜伝染病防疫指針」に基づいて定められる「高病原性鳥インフルエンザ及び低病原性鳥インフルエンザに関する特定家畜伝染病防疫指針に基づく遺伝子検査の方法について」(令和7年10月1日付け7消安第3979号)に則った核酸抽出手法の一つとして国や都道府県の病性鑑定施設等における利用が期待されている。なお、本試薬は令和7年10月2日より市販が開始された。

具体的データ

具体的データの図

その他

  • 予算区分 : 農林水産省(包括的レギュラトリーサイエンス研究推進委託事業 : 動物衛生対応プロジェクトのうち、新たな感染症の出現に対してレジリエントな畜産業を実現するための家畜感染症対策技術の開発)
  • 研究期間 : 2024~2025年度
  • 研究担当者 : 宮澤光太郎、峯淳貴、井関博、内田裕子、松本裕之(タカラバイオ(株))
  • 発表論文等 : 農林水産省「高病原性鳥インフルエンザ及び低病原性鳥インフルエンザに関する特定家畜伝染病防疫指針に基づく遺伝子検査の方法について」(令和7年10月1日付け7消安第3979号)