要約
複数種類の抗菌剤において、使用量の多い農場で大腸菌の薬剤耐性率が高い。大腸菌の薬剤耐性率は複数種類の抗菌剤の使用量と関連があり、多剤耐性の影響がみられる。
- キーワード : 豚、大腸菌、薬剤耐性、共選択
- 担当 : 動物衛生研究部門・人獣共通感染症研究領域・腸管病原菌グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
薬剤耐性菌は人の医療領域のみならず獣医畜産領域で世界的に問題となっており、家畜の中でも特に抗菌剤使用量の多い養豚業界で対策が必要とされている。薬剤耐性菌は抗菌剤存在下で選択され、増殖するが、豚に対する抗菌剤使用状況と薬剤耐性菌の分布状況との関連は十分に明らかにされていない。本研究では農場単位の年間の抗菌剤使用量と健康豚由来大腸菌の薬剤耐性率との関連を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 2017年~2020年に国内10カ所の養豚場で採取した健康母豚及び育成豚の糞便211検体及び229検体から、大腸菌705株及び788株が分離され、このうち567株及び672株が1薬剤以上に耐性を示す。
- 調査対象とした抗菌剤は、化学構造から複数種類のクラスに分類される。10農場について抗菌剤のクラス毎に使用量が相対的に多い農場と少ない農場に分類して比較すると、抗菌剤使用量は全体的に育成豚で多く、農場による差が大きい。母豚由来株、育成豚由来株ともに複数種類の抗菌剤のクラスにおいて、使用量の多い農場で当該クラスに分類される薬剤の耐性率が高い(図1)。
- 薬剤耐性と抗菌剤使用量に関連が認められ、特に育成豚において多数認められる(表1)。耐性を示す薬剤が分類されるクラス以外のクラスとも関連が認められ、多剤耐性菌が共選択されていることが示唆される(表1右列)。
成果の活用面・留意点
- 養豚場における抗菌剤の使用で多剤耐性菌が共選択されている可能性があるため、使用する抗菌剤は慎重に選択する必要がある。
- 薬剤耐性菌対策に抗菌剤使用量の低減は有効であるが、養豚場においては多剤耐性菌が分布しているため、一種類の抗菌剤の使用量を低減しても薬剤耐性率を十分に低減できない可能性がある。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(包括的レギュラトリーサイエンス研究推進委託事業 : 環境への抗菌剤・薬剤耐性菌の拡散量低減を目指したワンヘルス推進プロジェクト)
- 研究期間 : 2017~2023年度
- 研究担当者 : 玉村雪乃、小林創太、山根逸郎、渡部真文、Guruge Keerthi Siri、上垣隆一、新井暢夫、渡部綾子、岩田剛敏、勝田賢、楠本正博、秋庭正人(酪農学園大)
- 発表論文等 : Tamamura-Andoh Y. et al. (2025) J. Vet. Med. Sci. 87:1053-1059