要約
我が国の家畜に分布するSalmonella Typhimuriumは9つの遺伝子型に型別できる。各遺伝子型を識別できるマルチプレックスPCRと核酸クロマトグラフィーを組み合わせることで、簡易に本菌の遺伝子型を判定することが可能となる。
- キーワード : Salmonella Typhimurium、遺伝子型、アレル特異的PCR、核酸クロマトグラフィー
- 担当 : 動物衛生研究部門・人獣共通感染症研究領域・腸管病原菌グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
Salmonella Typhimurium(ST)およびその非定型株は我が国の家畜のサルモネラ症における主要な原因血清型であり、これらの血清型によるサルモネラ症は家畜伝染病予防法において届出伝染病に指定されている。分離菌株の遺伝子型を明らかにすることは、過去の流行株との異同鑑別するうえで重要である。これまでに我々は遺伝子型特異的SNPを検出するアレル特異的PCRをベースにした遺伝子型別法を構築しているが(従来法、2018年度成果情報)、9種類のPCRを実施するため煩雑であるという課題が残っている。そこで従来法と核酸クロマトグラフィーを組み合わせて簡易に遺伝子型別を実施可能な手法の開発を試みる。
成果の内容・特徴
- 本成果である遺伝子型別法は、STおよび非定型ST株について遺伝的背景を反映させた9つの遺伝子型に型別可能である。本法は各遺伝子型特異的SNPを検出するための9種類のプライマーセットとST特異的遺伝領域(A~C)を標的とした3種類のプライマーセットで構成される。なお、各フォワードプライマーはビオチンで標識され、リバースプライマーにはシングルDNAタグ(1~12)が付加されている(図1)。
- マルチプレックスPCR増幅液を青色のアビジンコートラテックスと混合後、メンブレンストリップに展開する。シングルタグDNAとメンブレンに固相化されている相補DNAがハイブリダイズし、ラテックス標識増幅産物がトラップされ、青色ラインが視認できる(図1、2)。適切に型別される場合、内部コントロールであるST特異的3領域のラインといずれかの遺伝子型のライン計4本が視認できる。
- STおよび非定型STの野外株(計103株)、非ST野外株(計12株)を用いて本法を検証すると、全株を適切に識別できる。
- 本法は1検体当たり1反応のPCRかつ電気泳動を必要とせず、従来法と比較して作業の簡略化および検査時間の短縮が達成されたため、分離株を簡易に遺伝子型別可能である(図3)。
成果の活用面・留意点
- 本法はシーケンサーなどの検査機器を整備していない検査機関でも、STおよび非定型STの遺伝的背景が判定可能となる。
- 本法で型別不能となるSTおよび非定型STが野外には一定数存在しており、その場合には別の分子疫学解析手法を併用する必要があることに留意する。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、文部科学省(科研費)
- 研究期間 : 2021~2024年度
- 研究担当者 : 新井暢夫、玉村雪乃、岩田剛敏、渡部綾子、楠本正博
- 発表論文等 : Arai N. et al. (2024) J. Microbiol. Methods 228:107082