要約
カンピロバクター・ジェジュニは全株がセリン要求性を示し、カンピロバクター・コリは一部がセリン要求性である。セリン要求性のカンピロバクター・ジェジュニおよびコリを共培養するとカンピロバクター・コリの増殖が抑制される。
- キーワード : カンピロバクター食中毒、カンピロバクター・コリ、カンピロバクター・ジェジュニ、セリン、菌種間競合
- 担当 : 動物衛生研究部門・人獣共通感染症研究領域・腸管病原菌グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
カンピロバクター食中毒は、日本国内だけでなく海外でも多発している細菌性食中毒の一つであり、食中毒患者から分離される菌種はカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)が75%、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)が10%を占める。C. jejuniの方がC. coliより分離率が7倍以上高いが、その理由として、C. jejuni とC. coliの基質特異性に基づく宿主内での増殖能の違いが指摘されている。しかし、腸管内に多く存在する共通基質における両菌種の増殖能の比較研究の報告はない。そこで本研究では、腸管内に多く存在する基質の一つであるセリンに対する両菌種の要求性に着目し、増殖特性を明らかにすることを目的とする。
成果の内容・特徴
- C. jejuni ST-21型はC. jejuniの中で鶏やヒト由来の分離株に多いことが知られる系統であり、用いた7株すべてがセリン要求性を示し、セリンを含まない培地ではセリンを含む培地と比較して増殖が有意に低下する(図1)。
- C. coli ST-828型はC. coliの中で鶏や豚など家畜由来の分離株に多いことが知られる系統であり、7株中4株のC. coliがセリン要求性を示し、セリンを含まない培地ではセリンを含む培地と比較して増殖が有意に低下するが、7株中3株は大きく変化しなかった(図2)。
- 単独培養では同等の増殖速度を示すC. jejuniとC. coliをセリン存在下で共培養すると、同時刻の単独培養と比較してC. jejuniの増殖に顕著な変化は無いが、24時間後のC. coliの増殖が有意に抑制される(図3)。
成果の活用面・留意点
- 食中毒事例の培養検査においてC. jejuniとC. coliが同時に存在する場合、両者の競合によりC. coliの検出率が低下する可能性があることを示している。
- 従来の検査方法ではC. coliによる食中毒リスクが過小評価されている可能性がある。本菌のアミノ酸要求性や増殖特性を明らかにすることで、検査方法の改良に役立てることができる。
- カンピロバクター食中毒患者由来の臨床データや疫学情報と組み合わせて評価することで、実態に即したC. coliによる食中毒リスク評価が可能となる。
具体的データ

その他