国内初発生したランピースキン病罹患牛から分離されたウイルスの遺伝的特徴

要約

2024年11月に福岡県・熊本県で確認された日本初のランピースキン病発生時において、発症牛の皮膚結節などから採取した検体からはウイルス遺伝子が検出され、ウイルスが分離されている。ゲノム系統樹解析の結果、近年周辺国で流行している株と極めて近縁である。

  • キーワード : ランピースキン病ウイルス、全ゲノム解析、牛、防疫措置
  • 担当 : 動物衛生研究部門・越境性家畜感染症研究領域・海外病グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

ランピースキン病(Lumpy skin disease : LSD)は、牛や水牛の感染症で、近年、東アジアおよび東南アジアで流行が継続している。発症個体では皮膚に病変がみられることに加え、泌乳量の減少や、増体の低下などを示し、農家への経済的影響が大きいため、深刻な問題となる。本研究では、日本で初めてとなる2024年のLSD発生事例について診断法を確認し、さらに、原因ウイルスの遺伝的特徴を明らかにすることを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 2024年11月に日本で初めてとなるLSDの発生が福岡県・熊本県で確認された。
  • 発症牛の多くはホルスタインであり、泌乳量の多い個体での発症が多い傾向を示す。
  • WOAHマニュアル記載のPCR法により、発症牛の皮膚結節(図1)からLSDウイルス(LSDV)の遺伝子が検出可能である。同材料から乳剤を作製し、ESH-L細胞等のLSDV感受性細胞に接種すると細胞変性効果が認められ、本培養上清からはLSDV特異遺伝子が検出されることから、感染性ウイルスの分離が確認できる(図2および図3)。
  • 全ゲノム解析の結果、LSDV日本分離株は東アジアおよび東南アジアで流行している「ワクチン様リコンビナント株(Cluster 2.5)」に分類され、周辺国で流行しているウイルスと極めて近縁である(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 本病が発生後およそ2か月で終息に至った要因として、迅速かつ厳格な防疫措置の実施、緊急ワクチン接種の実施に加え、LSDが吸血性節足動物(ベクター)を介して感染拡大する疾病であることから、冬季に伴うベクター活動の低下が終息を後押しした可能性が高い。
  • 周辺国では現在もLSDの流行が継続しており、今回の国内発生については、発生地域からLSDVを保持したサシバエ等のベクターが何らかのルートで侵入した可能性が考えられる。本研究成果は、今後のLSD侵入リスク評価や国内防疫体制強化に資する基礎的情報を提供するものであり、再侵入防止のためには、継続的なベクター監視と情報共有体制の維持が重要である。

具体的データ

図1 ランピースキン病を発症し、全身に皮膚結節を呈した牛,図2 ESH-L細胞におけるLSDVの細胞変性効果,図3 LSDV粒子の電子顕微鏡像,図4 LSDVの全ゲノムに基づく系統樹

その他

  • 予算区分 : 農林水産省(包括的レギュラトリーサイエンス研究推進委託事業 : 動物衛生対応プロジェクトのうち、新たな感染症の出現に対してレジリエントな畜産業を実現するための家畜感染症対策技術の開発)
  • 研究期間 : 2024~2025年度
  • 研究担当者 : 渡邉瑞季、生澤充隆、北村知也、白藤浩明、吉田直樹、西達也、川口理恵、國保健浩、舛甚賢太郎、深井克彦、森岡一樹
  • 発表論文等 : Watanabe.M. et al. (2025) J Vet Med Sci. 87: 1295-1299
    doi:10.1292/jvms.25-0290