要約
遺伝子型の異なる2種類の弱毒アフリカ豚熱ウイルス株を培養細胞または豚に共感染させることで、両遺伝子型のゲノムが組換わった強毒の交雑ウイルス(キメラウイルス)が容易に作出できることを示す世界初の報告である。
- キーワード : アフリカ豚熱ウイルス、アフリカ豚熱、キメラウイルス、ワクチン
- 担当 : 動物衛生研究部門・越境性家畜感染症研究領域・海外病グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
アフリカ豚熱ウイルス(African swine fever virus: ASFV)には少なくとも23種類の遺伝子型が存在する。最近、中国では、遺伝子型IとIIウイルスのゲノムが交雑したアフリカ豚熱ウイルス(以下キメラウイルス)が出現し、その流行はベトナム、ロシアそして台湾へと拡大している。さらに悪いことにキメラウイルスはベトナムで実用化されている遺伝子型IIをベースとしたワクチンに抵抗性を示す。しかしながら、ASFVのキメラウイルスに関する研究は世界的にもほとんどない。そこで、我々は遺伝子型I(GI)由来の自然弱毒株(OUR T88/3株)と遺伝子型II(GII)由来の遺伝子組換え弱毒株(AQSΔB119L)の2種類の株を培養細胞や豚へ同時に接種することでキメラウイルスの出現と、その性状を評価する。
成果の内容・特徴
- 培養細胞(in vitro)に上記の2種類の弱毒株を共感染させ、その培養上清を限界希釈する。なお、OUR T88/3は緑色蛍光タンパク質(GFP)陰性かつ赤血球吸着反応(HAD)陰性、AQSΔB119LはGFP陽性かつHAD陽性の表現型を示す。そのため、GFP陰性、かつHAD陽性をゲノム交雑の指標として3種類のキメラウイルス候補クローンを単離する。ゲノム解析を実施したところ、いずれのクローンもゲノムが交雑したキメラウイルスが認められる(図1)。
- 培養細胞で作出したキメラウイルスを哺乳豚に接種すると、すべての豚で病原性復帰が認められる(図1)。
- 豚(in vivo)に2種類の弱毒株を共感染させると、すべての豚が発症し死亡または安楽殺となる(図2)。
- 3.の豚の脾臓乳剤から限界希釈によってウイルスを3クローンずつ、計12株を単離し、ゲノム解析を実施したところ、すべてがキメラウイルスになっており、接種した株の弱毒変異が補完されて病原性復帰したことが推定される(図3)。
成果の活用面・留意点
- 本研究は培養細胞や豚において実験的にキメラウイルスを作出した世界で初めての研究である。
- 本成果はキメラウイルスに関する基礎的な知見となるのみならず、キメラウイルスを標的としたASFワクチン開発にも貢献する。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(包括的レギュラトリーサイエンス研究推進委託事業 : 官民・国際連携によるASFワクチン開発の加速化)
- 研究期間 : 2023~2024年度
- 研究担当者 : 北村知也、舛甚賢太郎、生澤充隆、Aruna Ambagala(Canadian Food Inspection Agency)、國保健浩
- 発表論文等 : Kitamura T. et al. (2025) Vaccines 13:462