要約
豚熱ウイルスGPE-ワクチン株のErns遺伝子を異種ペスチウイルスと組換えたマーカーワクチン候補株を豚に免疫することで、国内流行株に対する防御効果が得られる。感染抗体とワクチン抗体の識別も可能であり、豚熱清浄化対策に有用な基盤技術となる。
- キーワード : 豚熱ウイルス、マーカーワクチン、Erns遺伝子、ペスチウイルス、ELISA
- 担当 : 動物衛生研究部門・越境性家畜感染症研究領域・海外病グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
2018年以降、国内では豚熱(CSF)の発生が継続している。現行のGPE-ワクチンは有効であるが、感染抗体とワクチン抗体を識別できない点が課題である。これまでに、感染抗体識別を可能にするマーカーワクチン候補株として、GPE-株のErns遺伝子領域をアンテロープペスチウイルス(PAPeV)およびネズミイルカペスチウイルス(PhoPeV)の対応領域と置換した組換え株(vGPE-/PAPeV Erns株、vGPE-/PhoPeV Erns株)を作出し、豚における安全性および免疫原性を確認している。本研究では、これらマーカーワクチン候補株を免疫した豚を用いて、国内流行豚熱ウイルス(CSFV)に対する防御効果と抗体識別能を評価し、マーカーワクチンとしての実用性を検証する。
成果の内容・特徴
- 現行ワクチン株の感染性cDNAクローン(vGPE-株)およびそのErns遺伝子領域を異種ペスチウイルスと組換えた2種類のマーカーワクチン候補株を、それぞれ豚に免疫し、28日後に国内流行株JPN/1/2018で攻撃した結果、非接種豚で認められる発熱、ウイルス血症およびウイルス排泄は、ワクチン接種豚では認められない(図1)。
- 既製のCSFV E2およびErns抗体検出ELISAキットを用いることで、感染抗体とワクチン抗体を識別できる(図2)。国内流行株感染後血清ではCSFV E2とErns抗体の両方が検出される一方で、マーカーワクチン株免疫血清ではE2抗体のみが検出され、CSFV Erns抗体は検出されない。
- 両マーカーワクチン候補株は現行ワクチンと同等の防御効果を示し、感染抗体識別を可能にするワクチンとしての有用性が示されている。
成果の活用面・留意点
- 感染抗体識別が可能なマーカーワクチンとしての実用化に向けて、安全性の検証および製造技術の最適化が求められる。
- 市販ELISAキットを用いて識別が可能であり、既存検査体制を活用できる。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 農林水産省(包括的レギュラトリーサイエンス研究推進委託事業 : CSFの新たな総合的防除技術の開発)
- 研究期間 : 2023~2024年度
- 研究担当者 : 西達也、深井克彦、加藤友子、生澤充隆、迫田義博(北海道大学)
- 発表論文等 : Nishi T. et al. (2025) Vet. Microbiol. 303:110438