要約
わが国で流行している豚熱ウイルスJPN/1/2018株について、豚への経口接種により算出された50%豚感染力価は103.5 TCID50である。この知見は流行豚熱ウイルス感染動物からの排泄物のリスク評価や消毒薬の目標不活化力価の設定に必要な科学的根拠を提供する。
- キーワード : 豚熱、50%豚感染力価、経口接種、水平伝播、JPN/1/2018株
- 担当 : 動物衛生研究部門・越境性家畜感染症研究領域・海外病グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
わが国では2018年9月に豚熱が26年ぶりに再発生した。2025年11月時点で24都府県の100農場で発生が確認されるとともに、41都府県で8,800頭以上の野生イノシシの感染が確認されている。豚熱対策の一環として、2019年3月からは野生イノシシへの経口ワクチン散布が、同年10月からは家畜豚へのGPE-株ワクチン接種が開始されている。
豚熱ウイルスの経口接種による50%豚感染力価(PID50)を決定することは、感染動物からの排泄物のリスク評価や効果的な消毒薬の目標不活化力価を設定する上で極めて重要である。しかし、多くの豚熱ウイルス株ではPID50が十分に解明されていない。そこで本課題においては、わが国で現在流行しているJPN/1/2018株のPID50を決定することで、効果的な防疫対策の構築に必要な科学的根拠を得ることを目的とする。
成果の内容・特徴
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- (1) 105.0 TCID50接種豚では全頭がウイルス接種3~7日後から発熱と白血球数の減少を示す(図1)。
- (2) 103.0 TCID50接種豚では1頭がウイルス接種7日後から発熱を、5日後から白血球数の減少を示す。残り3頭は13~16日後から発熱を、12~13日後から白血球数の減少を示すことから、先行して感染した1頭からの水平伝播による感染と推察される(図1)。
- (3) 101.0 TCID50接種豚では発熱や白血球数の減少が認められない。
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- (1) 105.0 TCID50接種豚ではウイルス接種2日後からウイルス遺伝子が臨床材料から検出され、4~6日後から感染性ウイルス(102.0~105.8 TCID50/μL)が分離される(図2)。
- (2) 103.0 TCID50接種豚では、1頭でウイルス接種4~5日後からウイルス遺伝子が検出され、6~7日後から感染性ウイルス(101.8~105.0 TCID50/μL)が分離される。また、残り3頭ではウイルス接種11~14日後からウイルス遺伝子が検出され、11~16日後から感染性ウイルス(101.8~104.0 TCID50/μL)が分離される。このことから、臨床症状の推移と同様に、先行して感染した1頭からの水平伝播による感染と推察される(図2)。
- (3) 101.0 TCID50接種豚ではウイルス遺伝子や感染性ウイルスが検出されない。
- 各力価を接種した豚における感染率(101.0 TCID50接種豚 : 0%、103.0 TCID50接種豚 : 25%、および105.0 TCID50接種豚 : 100%)からSpearman-Kärber法によりPID50は103.5 TCID50と算出される。
成果の活用面・留意点
- 本課題で算出されたPID50は、豚熱ウイルス感染動物からの排泄物のリスク評価や消毒薬の目標不活化力価の設定に不可欠であり、わが国における豚熱の効果的な防疫対策構築に必要な科学的根拠を提供する。
- 本課題で算出されたPID50は、施設の制約により102.0および104.0 TCID50接種豚を設定せずに得られた試験成績に基づいて算出された力価であることに留意する必要がある。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 農林水産省(包括的レギュラトリーサイエンス研究推進委託事業 : CSFの新たな総合的防除技術の開発)
- 研究期間 : 2022~2024年度
- 研究担当者 : 深井克彦、西達也、生澤充隆、川口理恵、森岡一樹
- 発表論文等 : Fukai K. et al. (2025) J. Vet. Med. Sci. 87:769-773