牛伝染性鼻気管炎の経鼻ワクチン株と野外株を識別可能な遺伝子検査法

要約

本研究で開発されたアレル特異的定量PCRは、牛伝染性鼻気管炎の経鼻ワクチン株に特徴的な点変異を検出可能であり、経鼻ワクチン株と野外株を1ステップの反応で簡便に識別できる。

  • キーワード : 牛伝染性鼻気管炎、経鼻ワクチン、点変異、アレル特異的定量PCR
  • 担当 : 動物衛生研究部門・動物感染症研究領域・ウイルスグループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

牛伝染性鼻気管炎(IBR)は、牛アルファヘルペスウイルス1(BoAHV1)の感染に起因する牛の急性熱性伝染病である。本症の予防の一環として、経鼻生ワクチンが広く使われているが、臨床検体からBoAHV1が分離された場合、分離ウイルスが経鼻ワクチン株か野外株か識別し、原因究明を行う必要がある。そこで本研究では、1ステップの反応で簡便に経鼻ワクチン株と野外株を識別するため、経鼻ワクチン株に特徴的な点変異を標的としたアレル特異的定量PCR(AS-qPCR)を構築する。

成果の内容・特徴

  • AS-qPCRによって、経鼻ワクチン株と野外株を1ステップの反応で識別することが可能となる。また、数値による簡便な識別が可能となる。
  • 本識別法では、リバースプライマーの3'端から2番目の塩基を点変異部位に対応させる(表1赤字)。そして、その点変異部位に野外株の塩基を持つ野外株プライマーセット(A)、経鼻ワクチン株の塩基を持つ経鼻ワクチン株プライマーセット(B)を設計し、検体に対しこの両プライマーセットを用いて定量PCRを行う(図1)。野外株プライマーセット、経鼻ワクチン株プライマーセットの野外株、経鼻ワクチン株に対する検出感度の差により生じるCqの差(ΔCq : [A使用時のCq]-[B使用時のCq])を算出する。その結果、ΔCqが正の値(8以上)の場合は経鼻ワクチン株、ΔCqが負の値(-8以下)の場合は野外株と判定する(図2)。
  • 国内分離株29株を用いたAS-qPCRによる識別結果は、シークエンスによる識別結果と一致する。

成果の活用面・留意点

  • 本研究で開発されたAS-qPCRは、分離ウイルスに対して使用することを想定しているため、鼻腔スワブなどの臨床検体は未検証である点に留意すること。
  • ΔCqの設定は使用するリアルタイムPCR装置に応じて変動するため、本研究で使用したCFX 96 Deep well Realtime System以外を使用する場合は事前に検討が必要となる。

具体的データ

表1 本研究で用いたプライマーの配列,図1 AS-qPCRの条件,図2 AS-qPCRの概要

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2020~2024年度
  • 研究担当者 : 池田圭吾、友知久幸(沖縄県家畜衛生試験場)、須田遊人、畠間真一、岩丸祥史
  • 発表論文等 : Ikeda K. et al. (2025) J. Virol. Methods 336:115148