死亡牛由来Clostridium perfringens毒素型判定不能株のゲノム解析と毒素型判定基準の一部修正

要約

死亡牛から3つの主要毒素遺伝子(cpa、cpe、netB)を保有する毒素型判定不能なClostridium perfringens株が国内で初めて分離され、ゲノム解析により、本株はcpe獲得後のG型菌であると示唆される。本結果に基づき、毒素型判定上のG型菌のcpe保有条件を(-)から(±)に修正する。

  • キーワード : Clostridium perfringens、毒素型判定不能、netB、cpe、G型菌
  • 担当 : 動物衛生研究部門・動物感染症研究領域・細菌グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

Clostridium属菌は、主にその産生毒素により、家畜や人にさまざまな病気を引き起こす。Clostridium perfringensは、これまで36種類の病原性関連遺伝子が報告されている。以前は、このうち4種類の主要毒素遺伝子(cpa、cpb、etx及びiap/ibp)の保有状況によって5毒素型(A~E型)に分類されていたが、2018年に、これまでA型菌とされていた株のうち、netB(NetB毒素をコード)を保有する株をG型菌に、cpe(エンテロトキシンをコード)を保有する株をF型菌に細分化することが提案され、現在、本菌は7毒素型に分類されている。netBは、G型菌のみがプラスミド上に保有し、鶏における壊死性腸炎に関与するとされている。また、cpeは、F型菌と一部のC型/D型/E型菌の染色体上又はプラスミド上に存在し、人における食中毒に関与しているとされている。しかし、netBとcpeの両遺伝子を保有する株は極めて稀であり、現在の毒素型判定条件ではいずれに型にも型別できない(表1)。
2022年にnetBとcpeを併せ持つC. perfringens株(株名 : CP280)が国内で初めて分離されている。そこで本研究では、CP280のゲノムを構築し、各毒素遺伝子のゲノム上の位置と、CP280と既報のC. perfringens株の系統関係を調査することで、CP280をどの毒素型として扱うのが適切かを考察し、より適切な毒素型判定基準を提案する。

成果の内容・特徴

  • 突然死したホルスタイン種の牛の腸内容にてC. perfringensの増殖が認められ(1.0×106 個/g)、C. perfringens 6株が分離されている。毒素型判定PCRの結果、5株はA型と判定されるが、1株(CP280)はnetBとcpeを保有しており毒素型判定不能である。
  • Multilocus Sequence Typing解析では、CP280はST21に分類される。同一個体由来のA型菌5株の中でCP280と同じST21に属する株はなく、PubMLSTデータベースにST21として登録されている既報の株はすべてG型菌である。
  • CP280のゲノムは、1個の染色体と6個のプラスミドにて構成され、netBとcpeは、それぞれ異なるプラスミド上に存在する。CP280のnetB保有プラスミド(pCP280-82k)の大きさや遺伝子構成は既報のG型菌由来netB保有プラスミドと概ね同様であるが(図1)、本株のcpe保有プラスミド(pCP280-55k)の大きさや遺伝子構成は、他のどの既報のF型菌由来cpe保有プラスミドとも異なっている(図2)。
  • 554株(CP280と既報の553株)のコア遺伝子から抽出したSNPに基づく系統樹上では、CP280は、多くの鶏壊死性腸炎由来G型菌で構成される系統に位置する(図3)。また、36個の病原性関連遺伝子の保有状況も同系統のG型菌と概ね同様である。
  • 本研究の各解析結果は、CP280がcpe保有プラスミドを獲得後のG型菌であることを示唆しており、本株はG型菌の1つとして扱うことが適当であると考えられる。その上で、現行の毒素型判定の条件のうち、G型菌のcpe保有条件は(-)から(±)に修正される(表1)。

成果の活用面・留意点

  • CP280の「NetB産生能とpCP280-82kの安定性」及び「CPE産生能とpCP280-55kの安定性」を調べる追加解析が、本株の鶏及び人に対する病原性を把握する上で重要である。
  • cpeとnetBを考慮していない2018年以前の毒素型判定でA型菌と判定された鶏及び人の症例由来株の毒素型を再判定し、CP280のような株が見逃されていないか調査する必要がある。

具体的データ

表1 現行の毒素型分類と本研究結果に基づく一部修正案,図1 netB保有プラスミドの比較,図2 cpe保有プラスミドの比較,図3 CP280と既報の553株のSNPs系統解析

その他

  • 予算区分 : 農林水産省(包括的レギュラトリーサイエンス研究推進委託事業 : 動物衛生対応プロジェクトのうち、新たな感染症の出現に対してレジリエントな畜産業を実現するための家畜感染症対策技術の開発)
  • 研究期間 : 2022~2025年度
  • 研究担当者 : 馬田貴史、髙松大輔、岡本真理子、越智建太(愛媛県家保)
  • 発表論文等 : Mada T. et al. (2025) Front. Microbiol. 16:1580271