要約
コンピュータビジョン技術(人間の視覚の働きをコンピュータで再現し、画像から意味を自動的に抽出する技術)を用い、上方から撮影した牛の歩行動画を解析することで、歩様を定量的に評価できる。さらに、得られたデータを人工知能で解析することにより、跛行牛を効率的に検知できる。
- キーワード : 牛、コンピュータビジョン、機械学習、歩様評価、跛行検知
- 担当 : 動物衛生研究部門・衛生管理研究領域・衛生管理グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
跛行は、乳房炎と繁殖障害に次ぐ、酪農業における経済的損失の主要原因である。その大きな影響は、高い有病率に加え、乳量や体重の減少、受胎率の低下、淘汰率の上昇といった生産性への広範な悪影響に起因する。したがって、酪農場では定期的な歩様評価が強く推奨されており、跛行牛の早期発見、迅速な治療を通じて、経済的損失の軽減と動物福祉の向上が期待される。しかし、目視による歩様評価は、時間と労力を要するため定期的な実施が困難であるだけでなく、主観的であり、観察者間での評価が一致しにくいという問題がある。これらのことから、自動的かつ客観的に歩様を評価し、跛行を検知する技術への関心が高まっている。そこで本研究では、コンピュータビジョン技術の一手法である骨格検出法を用い、歩様を定量的に評価可能か明らかにするとともに、効率よく跛行を検知する技術を開発する。
成果の内容・特徴
- 骨格検出法を用いることで、上方から撮影した牛の10ヵ所のキーポイントを自動的に検出・追跡し、画像内の経時的な位置(XY座標)を数値データとして出力できる(図1)。
- 各キーポイントのXY座標の時系列データから、歩行速度や進行方向に対する左右方向の動きの大きさ、背や腰の角度変化といった歩様を定量できる(図2)。
- 跛行牛は健康牛に比べ、歩行速度が遅く、進行方向に対する左右方向の動きが大きく、また、背や腰の角度変化が大きいという特徴を捉えることができる。
- 定量化した歩様データを人工知能(機械学習法)により解析すると、跛行牛を感度82%、精度78%で検知できる。
成果の活用面・留意点
- 本技術はコンピュータビジョン技術を用い、自動的かつ定量的に歩様を評価することから、目視による評価と比べて省力的であり、客観的かつ再現性の高い評価が可能である。
- 本技術は上方から撮影した動画を使用することから、日常業務の妨げとならない場所(例 : 搾乳パーラーの出入り通路等)へカメラを設置することができ、容易に導入することが可能である。
- 本技術は長期間にわたり歩様を連続的に評価できるため、運動器機能のモニタリングや歩様の経時的変化に基づく跛行牛の早期発見への応用が期待できる。
- 本技術は機械学習を基盤としていることから、複数の農場で撮影した動画を蓄積し、追加学習を行うことで、多様な環境下においても正確な歩様評価・跛行検知が可能になると期待できる。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 文部科学省(科研費)
- 研究期間 : 2023~2025年度
- 研究担当者 : 檜垣彰吾、Guilherme L. Menezes(ウィスコンシン大)、Rafael E .P. Ferreira(ウィスコンシン大)、Ariana Negreiro(ウィスコンシン大)、Victor E. Cabrera(ウィスコンシン大)、Joao R. R. Dorea(ウィスコンシン大)
- 発表論文等 : Higaki S. et al. (2025) J. Dairy Sci. 108:3942-3955