多機能尾部センサによる子牛の健康管理技術

要約

活動強度、起臥、挙尾、体表温をモニタリング可能な多機能尾部センサを用いることで、下痢性疾患や呼吸器疾患に罹患した子牛の行動と体表温の変化を捉えられる。さらに、得られたデータを人工知能により解析することで、疾病への罹患を自動的かつリアルタイムに検知することができる。

  • キーワード : 子牛、尾部センサ、機械学習、疾病検知
  • 担当 : 動物衛生研究部門・衛生管理研究領域・衛生管理グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

子牛の死亡廃用事故件数は成牛を含めた件数の約半数を占めており、効率的な畜産経営や農場の規模拡大を阻害する大きな要因となっている。そのため、疾病への罹患を早期に発見し、適切な治療を行うことで損耗を低減することが望まれる。しかし国内では、畜産従事者の減少と農場の模化拡大が急速に進んでおり、子牛一頭ごとに健康観察のための時間を十分に割くことが困難となっている。そこで本研究では、子牛の疾病の約85%を占める下痢性疾患および呼吸器疾患を対象とし、活動強度・起臥・挙尾・体表温を連続的にモニタリング可能な多機能尾部センサを用い、罹患子牛の行動と体表温の変化を明らかにする。さらに、得られたデータを人工知能(機械学習)により解析することで、疾病への罹患を自動的かつリアルタイムに検知する技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 多機能尾部センサは簡便かつ低侵襲的に尾根部腹側に装着することができ、3分間隔で活動強度、Y軸(尾の長軸方向)周りのロール角、Y軸加速度および体表温を測定する(図1)。
  • センサデータは携帯電話回線やインターネット回線を利用してクラウド上に収集・管理することができ、随時、機械学習による解析が可能である。
  • Y軸周りのロール角から立位・左側臥位・右側臥位を判別することができ、一定期間内における横臥時間と姿勢変化回数を計測可能である。また、Y軸加速度から挙尾の程度を定量化できる。
  • 多機能尾部センサは、下痢性疾患および呼吸器疾患への罹患に伴う5つの指標(活動強度、横臥時間、姿勢変化回数、挙尾の程度、体表温)の変化を捉えることが可能である(図2)。
  • 上記5指標を機械学習により解析すると、疾病(下痢性疾患と呼吸器疾患)への罹患を感度76%・精度17%で自動的かつリアルタイムに検知できる。

成果の活用面・留意点

  • 本法は自動で取得される活動強度、起臥、挙尾、体表温に関するデータを用いることから、観察時間が大幅に短縮できる。
  • 本法は疾病検知の精度が低い(誤検知が多い)ものの、感度が高い(見逃しが少ない)ことから、疾病罹患子牛のスクリーニングへの利用が期待される。
  • 本法は機械学習を用いた疾病検知法であり、センサデータの蓄積や解析法の改善を図ることで、より正確な疾病検知が可能になると期待される。
  • 多機能尾部センサの安定した装着期間は最長で1か月程度であることから、本法は子牛の疾病リスクを短期間で把握する用途への適用が想定される。

具体的データ

図1 多機能尾部センサと装着器具および装着時の様子,図2 健康状態による尾部センサデータの違いと、疾病の疑いがある個体の抽出の流れ

その他

  • 予算区分 : その他外部資金(日本中央競馬会特別振興資金助成事業 : 乳用子牛のスマート健康管理技術開発事業)
  • 研究期間 : 2022~2024年度
  • 研究担当者 : 古川瑛理、尾澤知美、松井義貴(道総研)、佐々木羊介(明治大)、村山恭太郎(全酪連)、野口倫子(麻布大)、吉岡耕治(麻布大)、檜垣彰吾
  • 発表論文等 : Furukawa E. et al. (2025) Smart Agric. Technol. 12:101499
    doi:10.1016/j.atech.2025.101499