要約
酪農産業で大きな経済損失を招く乳房炎の適切な処置には、原因となる病原体の検出が必要不可欠である。本研究に用いたワンステップ型イムノクロマト法は、特別な機器を必要とせず1工程の簡単な操作で短時間に乳汁中の黄色ブドウ球菌およびレンサ球菌の有無を確認できる。
- キーワード : イムノクロマト法、黄色ブドウ球菌、レンサ球菌、乳房炎、抗原検出、簡易検出法
- 担当 : 動物衛生研究部門・衛生管理研究領域・病理・生産病グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
牛乳房炎の原因菌の同定は一般に細菌培養法で行われているが、結果の判定に日数を要するため、症状が悪化する場合や農場での感染が拡大する場合がある。そのため、酪農現場で実施可能な迅速で簡便な乳房炎原因菌の同定技術の開発が求められている。
本研究では、乳房炎の主要な原因菌である黄色ブドウ球菌およびレンサ球菌を迅速かつ簡易に1工程で検出可能なワンステップ型イムノクロマト法を用いて、その検出能力を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 本研究で用いたワンステップ型イムノクロマト法は、共通の溶菌試薬(3% Triton X-100、0.5% sodium N-lauroylsarcosinateおよび0.15% Zwittergent 3-12)と溶菌酵素の検出ストリップへの内蔵により、1工程60分間で乳汁中の黄色ブドウ球菌とレンサ球菌の有無を確認できる(図1)。
- 酪農現場から採材した77サンプルの牛乳房炎乳汁を用いた試験において、細菌培養法と比較して黄色ブドウ球菌に対しては感度86.4%、特異度90.9%、レンサ球菌に対しては感度77.8%、特異度95.6%が得られ、本研究に用いたワンステップ型イムノクロマト法は簡易検出法として十分な性能を有している(表1)。
成果の活用面・留意点
- 以前の検出法では、対象とする菌種に応じた試薬の使い分けと検出までに2工程を必要としており、その煩雑性から現場での利用には操作ミスによる原因菌の誤判断の可能性がある。本研究で用いたワンステップ型イムノクロマト法は、共通の試薬により簡便に黄色ブドウ球菌やレンサ球菌の有無が検出可能である。本法の活用により、酪農家の衛生管理対策や獣医師の治療方針選択の一助となる。
- 本研究に用いたワンステップ型イムノクロマト法は乳汁中の黄色ブドウ球菌やレンサ球菌の検出に適用できる可能性が高いが、死菌体の抗原とも交差しうる。また、黄色ブドウ球菌に対するイムノクロマト法は対策方法が異なるコアグラーゼ陰性ブドウ球菌にも反応する場合がある。そのため、酪農現場での使用時には留意する必要がある。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 民間資金等(受託試験)
- 研究期間 : 2020~2024年度
- 研究担当者 : 津上優作、杉山碧、長澤裕哉、安藤優(旭化成(株))、小田光太郎(旭化成(株))、前花浩志(旭化成(株))、林真太郎(NOSAI北海道)、藤井健人(NOSAI北海道)
- 発表論文等 : Tsugami Y. et al. (2025) Res. Vet. Sci. 196:105911