チャノコカクモンハマキのテブフェノジド剤抵抗性遺伝子を迅速かつ簡便に検出するAS-LAMP法

要約

チャ害虫チャノコカクモンハマキのテブフェノジド剤に対する抵抗性遺伝子マーカーを用いて、抵抗性遺伝子を持つ個体を迅速かつ簡便に検出する遺伝子診断法である。

  • キーワード:チャノコカクモンハマキ、テブフェノジド剤、抵抗性、エクダイソン受容体、AS-LAMP法
  • 担当:生物機能利用研究部門・昆虫利用技術研究領域・昆虫デザイン技術グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年、静岡県においてチャの重要害虫であるチャノコカクモンハマキAdoxophyes honmai Yasudaが多発傾向を示しており、農業被害が深刻化している。その原因として、ジアシルヒドラジン系昆虫成長制御剤(DAH系IGR剤)であるテブフェノジド剤を含む複数の薬剤に対して、本種が抵抗性を発達させていることがあげられ、薬剤抵抗性個体の発生の早い検出技術開発と防除対策の構築が強く求められている。そこで昨年度までに、本種のテブフェノジド剤に対する抵抗性遺伝子マーカーとしてエクダイソン受容体(EcR)の1アミノ酸変異(A415V)を引き起こす1塩基多型(C1244T)を同定し、この抵抗性遺伝子マーカーの遺伝子型を検出して抵抗性個体を判別する遺伝子診断法(PCR-RFLP法)を開発した。さらに本研究では、現場での実用化のために、さらに簡便で迅速なAS-LAMP(allele-specific loop-mediated isothermal amplification)法を用いた抵抗性遺伝子マーカーの検出技術を開発する。本手法はPCR-RFLP法と比較して、電気泳動せずに増幅DNAを検出できる。

成果の内容・特徴

  • EcR遺伝子上のC1244Tを含む領域を増幅するプライマーセット(表1)を用いて、図1に示した流れでLAMP反応を行うことで、抵抗性アリルのみが増幅する。反応液は、短波長(240-260nm)あるいは長波長(350-370nm)の紫外線で励起することにより、蛍光を検出することができる(図2)。
  • AS-LAMP法では、82%以上の判定精度で抵抗性アリルを検出できる。
  • AS-LAMP法は、従来のPCR-RFLP法と比較して短時間で検出可能であり、反応から検出までの作業工程が少ない(図2)。また、必要な実験機器は恒温器や恒温水槽のみである。

成果の活用面・留意点

  • 本法を用いたテブフェノジド剤抵抗性のモニタリングを実施し、野外の虫の薬剤抵抗性遺伝子頻度を調べることにより、薬剤抵抗性遺伝子頻度に応じた薬剤選択が可能である。

具体的データ

表1 EcR上のC1244Tを検出するAS-LAMP法のプライマー,図1 AS-LAMP法の流れ,図2 254 nmの紫外線照射下の反応液の蛍光検出,表2 AS-LAMP法とPCR-RFLP法の比較

その他