植物において小分子RNAを介したRNAサイレンシングは、ウイルスに対する重要な防御機構の一つである。この機構ではウイルスのRNAに相同な配列を持つ21塩基程度の小分子RNAを宿主作物が増幅し、ウイルスの増殖を抑制するしくみの存在が知られている。小分子RNAの増幅機構を試験管内で観察できる実験系の確立を通して、植物体を使った観察では得ることが困難な新たなウイルス制御法の開発に向けた基盤知見が得られるとともに、ウイルスを使ったゲノム編集の効率化に適用できる基盤知見の取得が期待できる。
植物において小分子RNAを介したRNAサイレンシングは、ウイルスに対する重要な防御機構の一つである。この機構ではウイルスのRNAに相同な配列を持つ21塩基程度の小分子RNAを宿主作物が増幅し、ウイルスの増殖を抑制するしくみの存在が知られている。小分子RNAの増幅機構を試験管内で観察できる実験系の確立を通して、植物体を使った観察では得ることが困難な新たなウイルス制御法の開発に向けた基盤知見が得られる。
植物のゲノム編集においては、アグロバクテリウム法や直接導入法によりゲノム編集酵素を導入した培養細胞からの個体再分化が広く用いられるが、主要作物では培養細胞からの個体再分化が困難なものが多く、一般に培養細胞を使ったアグロバクテリウム法および直接導入法のいずれも適用は困難である。一方、ウイルスを使ったゲノム編集においては、感染宿主となる作物個体にゲノム編集酵素遺伝子を組み込んだウイルスを感染させ、個体再分化を経ることなくゲノム編集個体を得ることが可能であり、さまざまな主要作物への適用が可能である。しかし、ゲノム編集酵素遺伝子を組み込んだウイルスは野生型ウイルスと比較して増殖や作物個体内伝搬の能力が劣り、宿主作物のRNAサイレンシングにより不活化される可能性が高まる。ウイルスに対する宿主のRNAサイレンシングの重要なステップである小分子RNA増幅の仕組みに係る仕組みを明らかにすることで、ゲノム編集酵素を組込んだウイルスの増殖制御とゲノム編集の効率化に適用できる基盤知見の取得が期待できる。
そこで、本研究ではタバコ及びシロイヌナズナ培養細胞抽出液を使って試験管内で小分子RNA増幅の各ステップの精密な解析を行い、これまで明らかになっていなかった分子機構の解明を通して、ウイルスによるゲノム編集の効率化に向けた基盤知見の取得が可能となる。