要約
公共データベース内のセイヨウミツバチの遺伝子発現データをすべて利用して構築した遺伝子配列セットである。ミツバチの有用形質に関わる遺伝子をデータ駆動型解析で同定するための基盤データであり、ゲノム編集により有用形質を導入したミツバチ系統作出への活用が期待される。
- キーワード : セイヨウミツバチ、データ駆動型解析、公共データベース、RNA-Seqデータ、免疫関連遺伝子
- 担当 : 生物機能利用研究部門・昆虫利用技術研究領域・昆虫デザイン技術グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
ミツバチは野菜や果物の送粉や蜜蝋産生等で産業上重要な家畜昆虫であるが、世界的にバロア病等の病気の発生による、頭数の減少が問題となっており、耐病性をはじめとした有用形質を付与したミツバチの作出が求められている。有用形質を付与にはゲノム編集が有効だが、多くの遺伝子が関与するためターゲットになる遺伝子の選定が難しい。そこで公共データベース上のミツバチのRNA-Seqデータ(網羅的な遺伝子発現データ)を再解析して、データ駆動アプローチ解析の基盤データとなる新たな遺伝子配列セットを構築する。さらに構築した遺伝子配列セットを用いて、ミツバチの代表種であるセイヨウミツバチにおける有用形質に関連する遺伝子探索を行う。
成果の内容・特徴
- 本成果の遺伝子配列セットは公共データベースで利用可能なすべてのセイヨウミツバチのRNA-Seqデータを利用しており、約15万の遺伝子配列が含まれている(図1)。
- セイヨウミツバチの感染症関連のRNA-Seqデータ(公共データベースで利用可能なもの)を上記遺伝子配列セットで再解析すると、様々なウイルスや細菌の感染に共通して発現量が上昇もしく抑制される遺伝子群が同定され、特に細菌感染で発現が抑制された遺伝子群の中には免疫反応に関連する遺伝子が含まれる。これらの遺伝子はゲノム編集のターゲットになることが期待される(図2)。
成果の活用面・留意点
- ミツバチの耐病性や送粉能力等の有用形質に関する候補遺伝子の探索が可能になる。
- ゲノム編集等で有用形質を付与したミツバチの作出が可能になる。
具体的データ

その他
- 予算区分 : JST共創の場支援プログラム(COI-NEXT)(Bio-Digital Transformation(バイオDX)産学共創拠点)
- 研究期間 : 2021~2022年度
- 研究担当者 : 横井翔、若宮健(広島大)、坊農秀雅(広島大)
- 発表論文等 : Yokoi K. et al. (2022) Insects 13 (10),931