要約
アメリカミズアブ幼虫の飼育残渣を食品廃棄物にあらかじめ加えることで、食品廃棄物から発生する臭気を抑える技術を開発した。ミズアブを使った食品廃棄物のリサイクル事業で生じる悪臭の問題を解決することから、本技術は昆虫タンパク質の生産拡大に利用できる。
- キーワード : アメリカミズアブ、食品廃棄物、臭気、リサイクル、腸内細菌叢
- 担当 : 生物機能利用研究部門・昆虫利用技術研究領域・昆虫デザイン技術グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
世界で生産される食料の1/3が消費されずに廃棄されており、持続的循環型社会の実現のため、食品廃棄物の再資源化が求められている。アメリカミズアブ(以下ミズアブ)は、食品残渣などの有機廃棄物をよく食べて育ち、回収した幼虫は家畜や養殖魚のための良質な飼料原料として利用できることから、新しい再資源化システムとして期待されている。一方、食品廃棄物を処理する際には悪臭が発生するため、ミズアブを利用した処理プラントにおいては、臭気を抑える技術の開発が求められている。そこで本研究では、臭気を抑えてミズアブを食品廃棄物で飼育する技術の開発を行う。
成果の内容・特徴
- 家庭ごみを模した食品廃棄物を容器に入れ1週間放置すると、腐敗によって悪臭の原因となるジメチルジスルフィド(二硫化メチル:特定悪臭物質に指定)とジメチルトリスルフィドが発生する。一方、食品廃棄物で同じ期間ミズアブ幼虫(図1)を飼育した容器では上記の悪臭成分の発生が顕著に抑えられる(図2)。
- 食品廃棄物(おから)に飼育使用後の残渣(飼育残渣)を加える前処理を行って7日間放置すると、前処理しない場合と比べてジメチルジスルフィドの発生が最大1/7に抑制される(図3)。
- 飼育残渣を食品廃棄物等にあらかじめ混合する前処理を行い、悪臭を抑えながらミズアブ幼虫を飼育する食品廃棄物の再資源化システムである(図4)。
成果の活用面・留意点
- 使用する食品廃棄物に特に制限はないが、食品廃棄物は粉砕し、混合したものを用いるのが好ましい。
- 悪臭の抑制にミズアブの腸内細菌叢が関与すると考えられ、飼育残渣のほか、ミズアブ幼虫の排泄物やミズアブ幼虫の粉砕物などの添加でも同様の効果がある。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、内閣府(ムーンショット型農林水産研究開発事業、地球規模の食料問題の解決と人類の宇宙進出に向けた昆虫が支える循環型食料生産システムの開発)
- 研究期間 : 2019~2022年度
- 研究担当者 : 上原拓也、霜田政美、道下玲奈(筑波大)、小林徹也、安田哲也
- 発表論文等 :