要約
植物根圏細菌および植物内生菌として単離されたシュードモナス属細菌3菌株は、ダイズ黒根腐病を抑制する。これらの細菌による植物への成長阻害は認められず、黒根腐病の防除資材として有効である。
- キーワード : ダイズ黒根腐病、植物保護細菌、病害抑制効果、防除資材
- 担当 : 生物機能利用研究部門・作物生長機構研究領・作物病害制御機構グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
国内のダイズ栽培において黒根腐病は重要病害の一つ(原料価格による試算として2019年度の国内被害額18億円)だが、有効な抵抗性品種や農薬はなく、防除技術の開発が求められている。植物根圏細菌や植物内生菌の中には病原微生物の生育を抑制する作用をもつものが知られており、植物保護細菌と呼ばれている。
そこで、本研究では植物根表面および根内部から分離された14菌株の細菌について黒根腐病の病害を抑制する効果について検証し、防除資材として有効な細菌を探索する。
成果の内容・特徴
- 植物根表面および根内部から分離された14菌株の細菌(シュードモナス属細菌、ストレプトマイセス属細菌、パントエア属細菌、ノカルジア属細菌、およびマイコバクテリウム属細菌)について、二重プレート法(図1)により細菌から放出される揮発性物質が黒根腐病菌に及ぼす影響を調べることにより、シュードモナス属細菌3菌株(OFT2株、OFT5株、Cab57株)に病原菌の増殖抑制活性が認められる(図1)。
- ダイズ播種時にシュードモナス属細菌3菌株(OFT2株、OFT5株、Cab57株)の細菌懸濁液を培養土に加えると、ダイズ根および地上部の黒根腐病の病徴が軽減される(図2)。
- シュードモナス属細菌3菌株(OFT2株、OFT5株、Cab57株)の菌懸濁液のみをダイズ播種時に培養土に加えてもダイズの生育阻害は見られない。
成果の活用面・留意点
- 本成果に関わるシュードモナス属細菌3菌株のダイズ黒根腐病以外の作物病害に対する有効性を検証中である。
具体的データ
その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(イノベーション創出強化研究推進事業)
- 研究期間 : 2020~2021年度
- 研究担当者 : 小林光智衣、竹内香純、姜昌杰、Khin Thuzar Win、田中福代、ウーアウン ゾー(国立研究開発法人国際農林水産業研究センター)
- 発表論文等 :
- Win K.T. et al. (2022) Sci. Rep. 12:14510
- 姜昌杰ら特願(2021年11月8日)
- 姜昌杰ら特願(2021年11月8日)