品種登録出願審査に利用できるイネ縞葉枯病抵抗性DNAマーカーセット

要約

2種のDNAマーカーST71とST5- BOで構成されるイネ縞葉枯病抵抗性DNAマーカーセットは、イネ品種の縞葉枯病抵抗性遺伝子Stvb座の遺伝子型を3群(感受性1群および抵抗性2群)に類別し、品種登録出願審査に利用できる。

  • キーワード : イネ、DNAマーカー、イネ縞葉枯病、品種登録、審査基準
  • 担当 : 生物機能利用研究部門・作物ゲノム編集研究領域・ゲノム編集技術グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

植物新品種保護国際同盟国においては、新品種の審査の効率化や育成者権侵害の立証にあたって、遺伝子情報を活用した技術開発が進められている。国内で毎年7-11万haの被害を出すイネ縞葉枯病抵抗性の品種登録に際しての審査基準は、生物検定によって日本水稲型(感受性)、日本陸稲型(抵抗性)、外国稲型(抵抗性)の3群に類別している。生物検定に比べて、大幅な時間と労力が軽減できるDNAマーカーを利用した審査基準においても同様の類別がなされることが望ましいが、これまで育種選抜に用いられているDNAマーカーST71(発表論文等の第4項を参照)は、感受性/抵抗性の2群にしか類別できなかった。
本課題では、抵抗性品種群を日本陸稲型と外国稲型に類別できるDNAマーカーを新たに開発し、ST71と組み合わせることでイネ縞葉枯病抵抗性審査基準に適合したDNAマーカーセットを構築することを目指す。

成果の内容・特徴

  • 品種群類別に用いるDNAマーカーセットは、2種のマーカーST71およびST5-BOで構成される(図1)。新規開発のST5-BOは、ST71によって抵抗性品種群に類別されたイネ品種候補を日本陸稲型と外国稲型に類別するために用いる。
  • ST71とST5-BOの増幅断片サイズや増幅の有無を組み合わせて、数時間でStvb座の遺伝子型を特定する。イネ品種は遺伝子型に基づいて、生物検定による評価と同様に日本水稲型(stvb-j)、日本陸稲型(Stvb)、外国稲型(Stvb-oStvb-iを含むその他)の3群に類別される(図2)。
  • ST71およびST5-BOを組み合わせた本マーカーセットは、生物検定のような専用設備や特殊な抵抗性検定技術を必要とせず、迅速かつ高い再現性でイネ品種の縞葉枯病抵抗性を遺伝子型で類別することができる(表1)。
  • 本DNAマーカーセットを用いたDNA分析の試験方法は、2023年4月より新たなイネ縞葉枯病抵抗性の特性評価基準として、生物検定による試験方法とともに、イネの審査基準・特性表に併記されている。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : 稲の育種に関わる機関および育種家
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 全国
  • その他 :
    • 国内10ヵ所の水稲育成機関により、ST71およびST5-BOを用いた品種の類別技術の妥当性が確認されている。
    • 本成果情報は、農林水産省品種登録におけるイネの審査基準・特性表p35-36記載のDNA分析の試験方法を補完するものである。([その他]発表論文等の項を参照)。

具体的データ

図1 2種のDNAマーカーによるイネ縞葉枯病抵抗性品種群類別の模式図,表1 DNAマーカーセットを用いた類別の利点,図2 イネ縞葉枯病抵抗性品種群の類別

その他