要約
アミノ酸の排泄機能を調節することで、アメリカミズアブ幼虫の必須アミノ酸ヒスチジンやメチオニン含有量を増加させる技術である。本技術は魚粉代替タンパク質源として必須アミノ酸を強化したミズアブの品種開発に応用できる。
- キーワード : アメリカミズアブ、昆虫飼料、必須アミノ酸、ヒスチジン、メチオニン
- 担当 : 生物機能利用研究部門・昆虫利用技術研究領域・昆虫デザイン技術グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
人口の激増により食糧、特にタンパク質、の供給が需要に追い付かないタンパク質危機に近い将来陥ると予想されており、それは喫緊に解決すべき問題とされている。腐食昆虫のアメリカミズアブ(以下、ミズアブ)は様々な食品加工残渣や農業残渣等の食品ロスから良質なタンパク質を生産できる昆虫として多くの国々で注目され、水産養殖・家畜用飼料における魚粉代替品としての研究・開発が進められている。しかしミズアブ幼虫では水産飼料用原料としてヒスチジンやメチオニンなど不足する必須アミノ酸がある。そこで本研究では、魚粉代替タンパク質源となるミズアブを育種するために必須アミノ酸を強化する技術の開発を行う。
成果の内容・特徴
- ミズアブでは必須アミノ酸を合成できないため、ミズアブ幼虫のアミノ酸排出機能を抑制させることにより、アミノ酸を増加させることができる(図1)。
- アミノ酸排出機能に関わる遺伝子をRNA干渉(RNAi)処理により抑制すると、ミズアブ幼虫のアミノ酸総量は1.8倍に増加する(図2)。
- アミノ酸排出機能を抑制させたミズアブ幼虫では、養魚の成育に重要な必須アミノ酸であるヒスチジンとメチオニンが2.5倍以上に増加する(図3)。
成果の活用面・留意点
- RNAi処理は遺伝子発現を一時的に抑制してミズアブの必須アミノ酸を強化する技術であり、実用的な大規模飼育にはゲノム編集等による育種技術が必要である。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 農林水産省(ムーンショット型農林水産研究開発事業)
- 研究期間 : 2019~2023年度
- 研究担当者 : 劉家銘、上原拓也、霜田政美(東京大)
- 発表論文等 :
- 劉、特願(2022年11月18日)
- Chia-Ming Liu, Takuya Uehara, Masami Shimoda 2024. Journal of Insects as Food and Feed. DOI: 10.1163/23524588-00001155