要約
アミノ酸の一種で環境負荷が少ないグルタミン酸を用いて、キュウリ等の重要土壌病害の防除に有効な植物保護細菌の機能を高める技術である。本成果は土壌消毒用の化学農薬の使用量低減に貢献する。
- キーワード : 植物保護細菌、ピシウム病害、グルタミン酸、微生物資材
- 担当 : 生物機能利用研究部門・作物生長機構研究領域・作物病害制御機構グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
農作物の病害は主にカビ等の病原微生物を原因として引き起こされ、その収量に大きな影響を及ぼす。特に土壌中に蔓延する土壌病害は防除が困難でありその防除には主に化学農薬が使用されているが、継続的な化学農薬の使用は環境負荷が大きく、薬剤耐性菌の出現を招くなど課題がある。化学農薬に替わるものとして自然環境から見つかった微生物を活用した防除技術が注目されているが、化学農薬と比較して効果が弱く、また高コストであるなど課題があった。
そこで本研究では、持続可能な営農の実現に向けて、病原微生物の生育を抑制する作用を有する植物保護細菌(Pseudomonas protegens)を用い、その機能を高めるための化合物として環境負荷の低いアミノ酸に着目し、植物保護細菌と共に土壌に添加した際の病害防除効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
- キュウリ幼苗と重要土壌病害菌の一つであるピシウム病菌(Pythium ultimum)を用い、播種後2週間栽培し試験を行うと無添加区ではキュウリの生育が顕著に悪化するが、播種時に植物保護細菌を添加すると生育状況が回復する。生育状況は植物重量にて評価する(図1)。
- 各種アミノ酸を植物保護細菌と併用して病害抑制効果の変化を調べると、グルタミン酸に効果が認められ、加えていない場合と比較し植物重量が2倍程度増加する(図1)。
- 温室にて苗を圃場に移植する頃まで(1ヶ月間)栽培しても植物保護細菌およびグルタミン酸の効果が持続する(図2)。
成果の活用面・留意点
- グルタミン酸は植物保護細菌の機能を高める化合物として利用できる。
- 効率的な防除のためには栽培初期の段階で添加する必要がある。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、文部科学省(科研費)
- 研究期間 : 2018~2023年度
- 研究担当者 : 竹内香純、瀬尾茂美、小木曽真佐代、諸星知広(宇都宮大)
- 発表論文等 :
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Takeuchi K. et al. (2023) Mol. Plant-Microbe Interact. 36:323-333
- 竹内、瀬尾「植物の土壌伝染性病害防除方法」特許第7078982号(2022年5月24日)