要約
アルカリ処理によって低分子量化したシルクフィブロインから作成したハイドロゲル材は、体内で早く分解し、癒着(本来離れているべき組織どうしが手術後にくっついてしまうこと)を防ぐ効果がある。癒着を防止する医療機器「癒着防止吸収性バリア」としての応用が期待される。
- キーワード : シルクフィブロイン、低分子量、ハイドロゲル、癒着防止吸収性バリア、分解吸収性
- 担当 : 生物機能利用研究部門・絹糸昆虫高度利用研究領域・新素材開発グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
外科手術後の癒着を防止する医療機器である癒着防止吸収性バリアには、組織の修復時には物理的障壁として機能し、その後、速やかに分解吸収されることが求められる。シルクフィブロインから成るハイドロゲル(シルクゲル)は、関節鏡手術にも用いられ得る材料形態を取り、また、生体組織に比べて十分に強い力学特性を示すものの、体内での分解吸収性が遅い。移植されたシルクゲルは、月・年単位で残存する場合もあり、これは腹腔内組織の修復期間(1~2週)よりも長い。このため、シルクゲルには癒着防止吸収性バリアとしての生体適合性を期待できない。
そこで、本研究では、シルクゲルの体内での分解吸収性を早めることで、癒着防止吸収性バリアとしての機能を引き出すことを目指す。
成果の内容・特徴
- アルカリ処理によって低分子量化したシルクフィブロインから成るハイドロゲル(低分子量シルクゲル)は、通常のシルクフィブロインから成るそれ(高分子量シルクゲル)に比べて、早い分解吸収性を示す(図1)。
- 低分子量シルクゲルは、癒着組織を構成する線維芽細胞に対し、低親和性を示す(図2)。
- 低分子量シルクゲルのみが、癒着防止効果を示す(腹腔内癒着モデルラットを用いた実験による)(図3)。
成果の活用面・留意点
- 低分子量シルクゲルは、癒着防止効果を示したことから、癒着防止吸収性バリアとしての応用が期待される。
- 低分子量シルクゲルの体内での残存期間は、腹腔内組織の修復期間(1~2週)よりも長い。このため、腹腔内用の癒着防止吸収性バリアとしては、低分子量シルクゲルの癒着防止機能は不十分な可能性がある。そこで、現在、修復期間が3~6週程度とされる腱に対する癒着防止吸収性バリアとしての応用を目指している。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 文部科学省(科研費)、厚生労働省(医療研究開発推進事業費補助金)、民間資金等(資金提供型共同研究)
- 研究期間 : 2022~2024年度
- 研究担当者 : 神戸裕介、河野友祐(藤田医大)、佐々木誠(チャーリーラボ)、古賀舞都、藤田順之(藤田医大)、亀田恒徳
- 発表論文等 : Kambe Y, et al. (2024) ACS Biomater. Sci. Eng. 10:7441-7450