要約
タバコカスミカメの共生細菌リケッチア感染オスと非感染メスが交配すると、細胞質不和合により卵が孵化しない。感染個体のみもしくは非感染個体のみを使用することで、タバコカスミカメの増殖効率の最大化が期待される。
- キーワード : タバコカスミカメ、生物的防除、天敵、共生細菌、生殖操作
- 担当 : 生物機能利用研究部門・昆虫利用技術研究領域・昆虫制御技術グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
共生細菌の一部は、昆虫に栄養を提供する機能や、昆虫の不妊化や性比異常など生殖を操作する機能をもつ。しかし、実際に共生細菌の機能が明らかになっていることは少なく、多くの共生細菌の機能は未解明のままである。天敵昆虫タバコカスミカメ Nesidiocoris tenuis (図1)では、野外個体の21~96%が共生細菌リケッチアに感染している。共生細菌の機能を解明することで、天敵昆虫の害虫防除機能の強化への応用が期待される。本研究では、タバコカスミカメに感染している共生細菌リケッチアが、宿主の増殖に与える影響を明らかにすることで、天敵昆虫の増殖効率を最大化する技術の開発を行う。
成果の内容・特徴
- タバコカスミカメの共生細菌リケッチアは、感染オスと非感染メスが交配した場合にのみ卵が孵化しない、細胞質不和合と呼ばれる生殖操作を引き起こす(図2)。細胞質不和合が起こる組み合わせを避けることで、タバコカスミカメの増殖効率が上昇する(図3)。
- 共生細菌リケッチアの感染個体と非感染個体が混在していると、細胞質不和合により孵化率が低下する可能性がある。感染個体のみもしくは非感染個体のみを使用することで、タバコカスミカメの増殖効率の最大化が期待される。
成果の活用面・留意点
- 共生細菌による細胞質不和合の強度には、系統差が存在する例が報告されている。そのため、各地域の個体を使って細胞質不和合の実態を把握するとともに、細胞質不和合の原因となる遺伝子を明らかにすることが重要である。これにより、細胞質不和合が起こるか否かを診断し、増殖に最適な天敵個体を選択することができる。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 農林水産省(ムーンショット型農林水産研究開発事業)
- 研究期間 : 2023~2024年度
- 研究担当者 : 大鷲友多、陰山大輔、新井大、安達鉄矢(宮崎大)
- 発表論文等 : Owashi Y. et al. (2024) Proc. R. Soc. B 291:20240680