ネギアザミウマのジノテフラン剤抵抗性発達に関与するシトクロムP450遺伝子

要約

ジノテフラン剤に抵抗性を示すネギアザミウマ系統では、ジノテフラン剤を代謝するシトクロムP450遺伝子が過剰発現している。本遺伝子の発現量をモニタリングすることで、ネギアザミウマのジノテフラン抵抗性発達の有無を推定することができる。

  • キーワード : 解毒分解酵素、農業害虫、ネオニコチノイド剤抵抗性、遺伝子発現解析、代謝解析
  • 担当 : 生物機能利用研究部門・昆虫利用技術研究領域・昆虫デザイン技術グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

ネギ属を含む広範囲の野菜の重要害虫であるネギアザミウマThrips tabaciでは、近年、合成ピレスロイド剤やネオニコチノイド剤などの殺虫剤に対する抵抗性が発達した個体群の分布拡大が続いており、農業被害の拡大が懸念されている。ネギアザミウマの合成ピレスロイド剤抵抗性については、遺伝子診断技術を活用した抵抗性発達状況の把握に基づく防除対策の実施が可能であるが、ネオニコチノイド剤については、抵抗性発達の要因が不明であるため、抵抗性モニタリングに活用できる遺伝子診断技術は未開発である。そこで本研究では、ネギアザミウマ防除に用いられるネオニコチノイド剤の1つであるジノテフラン剤の抵抗性発達要因を明らかにするために、次世代シーケンサーを活用した遺伝子発現解析および殺虫剤の解毒分解酵素であるシトクロムP450遺伝子の代謝解析等を行う。

成果の内容・特徴

  • 野外から採集したネギアザミウマのジノテフラン剤抵抗性系統では、ジノテフラン剤に対する感受性(補正死虫率)が感受性系統に対して大幅に低下している(図1)。
  • ネギアザミウマのジノテフラン剤抵抗性系統では、シトクロムP450遺伝子の1つであるTtCYP3652A1の発現量が感受性系統に対して顕著に上昇しており(図2)、発現量が高い6つのシトクロムP450のうち、TtCYP3652A1のみがジノテフラン剤の代謝能力が高い(図3)。
  • ネギアザミウマのジノテフラン剤抵抗性系統では、ワタアブラムシ等で報告されているネオニコチノイド剤抵抗性発達に関与する作用点変異は確認されていない。
  • 以上のことから、TtCYP3652A1の過剰発現がネギアザミウマのジノテフラン剤抵抗性発達の主要因である可能性が高い。

成果の活用面・留意点

  • TtCYP3652A1の発現量をリアルタイムPCR法等により測定する遺伝子診断技術を開発することにより、野外個体群におけるジノテフラン剤抵抗性発達の有無を推定することができる。
  • TtCYP3652A1の過剰発現を引き起こす要因は特定されていない。要因となるゲノム上の変異等を特定することで、発現量を測定する手法よりも簡易かつ迅速な診断が可能となるDNAマーカーを用いた遺伝子診断技術の開発が可能となる。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(次世代ゲノム基盤プロジェクト:ゲノム情報等を活用した薬剤抵抗性管理技術の開発)
  • 研究期間 : 2014~2024年度
  • 研究担当者 : 上樂明也、桑崎誠剛、飯田博之、平田晃一(日本曹達)、西尾史也(日本曹達)、下村肇(日本曹達)、草野尚雄(茨城園研)、高木素紀(茨城園研)、横山朋也(茨城園研)、柴尾学(大阪環農水研)、城塚可奈子(大阪環農水研)
  • 発表論文等 : Jouraku A. et al. (2025) Pestic. Biochem. Physiol.
    doi:10.1016/j.pestbp.2025.106399