要約
いもち病(穂いもち)による穂の被害程度を、被害部位別に8段階に設定したスコアを用いて評価する。複数の被害穂のスコアを集約した発病初期(出穂から10-14日)のスコア割合から、抵抗性遺伝子を保有する品種・系統の穂いもち抵抗性強度を推定できる。
- キーワード : イネ、穂、いもち病、抵抗性遺伝子
- 担当 : 生物機能利用研究部門・作物ゲノム編集研究領域・ゲノム編集技術グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
イネの品種育成において、穂のいもち病(穂いもち)に対する抵抗性強度は重要な情報である。しかし、常法の穂いもちの抵抗性検定は、環境要因を考慮しつつ複数回の達観調査から総合的に判断するため、技術的に習熟した専門家でなければ適切な評価結果を得ることが困難である。そのため、葉に対するいもち病抵抗性検定ほど普及していない。
そこで、本研究では、日本国内で利用されている6種類の圃場抵抗性遺伝子(穂いもち抵抗性遺伝子Pb1とqPbm11を含む)をもつ品種・系統群を用いて専門家でなくとも穂いもちを評価できる手法を構築するとともに、穂いもち抵抗性評価に関わる基盤情報を明らかにする。
成果の内容・特徴
- いもち病による穂のダメージは、収量への影響を考慮した穂の被害部位別に8段階(0から7)に設定したスコアとして判定する(図1)。1穂内に被害部位が複数カ所ある場合は、最も数値の大きいスコア(最大スコア)を採用する。複数の穂の最大スコアに基づいたスコアの割合から、系統としての穂いもち抵抗性強度を評価する。
- 抵抗性6系統と感受性品種の「コシヒカリ」は、いずれも穂いもちの進行に伴い、程度の差はあるものの低スコア(0-1)から中スコア(2-4)を経て、高スコア(5-7)へと推移する(図2)。抵抗性強度は、高スコアが占める割合の大きさとして評価される。
- 発病初期(概ね出穂から10-14日)の低スコアの割合とその2週間後(達観調査適期)の高スコアの割合に高い相関(r=-0.86)がみられる(図3)。従って、発病初期の低スコアが占める割合から、抵抗性遺伝子を保有するイネの穂いもち抵抗性強度の推定が可能となる。
成果の活用面・留意点
- 本方法は穂いもち検定の未経験者でも利用可能である。
- 評価の精度は調査穂数に依存する(30穂程度を推奨)。
- 「切り花染色剤を利用したイネいもち病の病斑部の検出技術」(2019年成果情報)により穂の被害部位の判断とスコア化が容易となる。
- 穂いもち抵抗性遺伝子qPbm11を導入するための導入親系統(コシヒカリNIL)とDNAマーカー情報は発表論文を参照のこと。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金
- 研究期間 : 2016~2024年度
- 研究担当者 : 林敬子、早野由里子、熊谷真彦、中村充(愛知県農総試)、吉田朋史(愛知県農総試)、鈴木太郎(愛知県農総試)
- 発表論文等 :
- Hayano-Saito Y.et al. (2024) JARQ 58:4
- 林ら、特願(2024年9月27日)