要約
出穂促進遺伝子(Ppd-H1)をゲノム編集でピンポイント改変することで出穂時期を遅らせ、現行オオムギ品種の晩生化系統を作出することができる。ゲノム編集系統では栄養成長期間が延長し、茎葉収量が増加する
- キーワード : オオムギ、出穂期、若葉、ゲノム編集、iPB(in planta Particle Bombardment)法
- 担当 : 生物機能利用研究部門・作物ゲノム編集研究領域・ゲノム編集作物開発グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
近年、オオムギの栽培現場において、気候変動等の影響から、意図しない早期出穂が問題となっている。そこで本研究では、農研機構らが開発したゲノム編集技術、in planta Particle Bombardment(iPB)法を用いて、オオムギの出穂促進遺伝子(Ppd-H1)の機能を欠損させる。出穂期が遅延することで茎葉収量が増加した晩生化系統が作出される。
成果の内容・特徴
- 品種に依存しないゲノム編集技術であるiPB法を用いて、オオムギゲノム編集は以下の通り行う。ゲノム編集酵素を金粒子に付着させ、顕鏡下で露出させた種子胚茎頂にパーティクルガンを用いて導入する。導入後の胚から植物を成長させ、約30日齢の植物葉組織を用いて、遺伝子型選抜を行う(図1)。次世代種子を取得し、ゲノム編集変異個体を選抜し、ホモ接合型で持つ系統を固定する。
- ゲノム編集酵素(CRISPR/Cas9)は、出穂促進遺伝子(Ppd-H1)の第3エキソンを標的とするように設計する(図2a)。当該領域に1塩基挿入を持つゲノム編集系統(NH7-6およびNH3-2)を取得し表現型解析に用いる(図2b)。
- 長日条件(16時間明期/8時間暗期)の人工気象室では、各ゲノム編集系統は原品種「ニシノホシ」に比べて出穂が約40日遅延する(図2c、d)。
- 各ゲノム編集系統では栄養生長期間が延長されることで、原品種に比べて茎葉収量が約17倍に増加する(図2d)。
成果の活用面・留意点
- 用いた手法は、細胞培養を使わないため、広範囲のオオムギ品種に適用可能と考えられる。
- 出穂期が遅延することで茎葉収量が増加し、若葉の栽培に適するオオムギ新系統が作出される。
- 出穂制御遺伝子(Ppd-H1)の機能が既に低下している品種が存在する。その場合の効果は限定的となる可能性がある。本知見を適用する前に、品種の遺伝子型に注意する必要がある。特に外国産の春播き品種に注意する必要がある。
- iPB法の国内における商業利用には、農研機構とカネカ(株)からの許諾が必要である。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 民間資金等(資金提供型共同研究)
- 研究期間 : 2017~2019年度
- 研究担当者 : 今井亮三、手塚大介、Huikyong Cho、小野寺瞳
- 発表論文等 : Tezuka et al. (2024) Plant Physiology 195:287-290 doi:10.1093/plphys/kiae075