中分子量シルク原料

要約

天然シルクの分子量(約36万)と加水分解シルクのそれ(約4万)との中間の分子量(約6~15万)を示すシルク粉末を得た。この中分子量シルク粉末は水に溶け易く、得られた水溶液は天然/加水分解シルクの特長(成形加工性/保存安定性)を両立するため、多分野への応用に適する。

  • キーワード : 分子量制御、親水性、成形加工性、保存安定性、シャンプー・コンディショナー
  • 担当 : 生物機能利用研究部門・絹糸昆虫高度利用研究領域・新素材開発グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

カイコが作る繭の成分であるシルクは、繊維形態のみならず、水溶液や粉末等の原料形態とした後に非繊維形態に成形加工されて利用される。シルク水溶液やシルク粉末は、シルクの分子量に依存した性質を示す。天然シルクに近い分子量を有する高分子量シルクの水溶液は、高い成形加工性を示すも保存安定性に乏しい。また、高分子量シルク粉末は水に溶け難い。一方、加水分解を経た低分子量シルクの水溶液は、保存安定性に優れるものの、成形加工性は低い。そこで本研究では、原料形態への加工時の分子量制御技術に基づき、高分子量シルクと低分子量シルクの「いいとこどり」が可能な中分子量シルク原料(水溶液・粉末)を開発する。

成果の内容・特徴

  • シルクの中分子量化は、温度や時間を制御したアルカリ加水分解によって成される。高、低分子量シルクの分子量は、それぞれ約28~36万、約4~5万であるが、中分子量の分子量は、6~15万である(図1)。
  • 中分子量シルク粉末は、高分子量シルク粉末とは異なり、常温の水中で速やかに溶解する(図2)。
  • 中分子量シルク水溶液は、冷蔵保存で短くとも半年間安定である。
  • 中分子量シルク水溶液は、ハイドロゲルやフィルムへの成形加工性を有する(図3)。
  • (株)あつまるホールディングスの自社ブランド「COKON LAB」より2025年12月に中分子量シルク粉末を配合したシャンプー・コンディショナーが上市された(図4)。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : シルク加工事業者。
  • 普及予定地域 : 全国の養蚕・製糸実施地域。
  • その他 :
    • 中分子量シルク原料の製造技術は、(株)チャーリーラボに移管済みである。
    • 中分子量シルク水溶液のヒト閉鎖法パッチテストを行い、安全品であることを確認済みである。
    • 中分子量シルクから成るハイドロゲルやフィルムは、医療機器 : 癒着防止吸収性バリアとしての応用可能性を有する。

具体的データ

図1 高・中・低分子量シルクの分子量の比較,図2 高・中・低分子量シルク粉末の水への溶解性,図3 中分子量シルク水溶液を成形加工して得られるハイドロゲルとフィルム,図4 中分子量シルク粉末を配合したシャンプーとコンディショナー(2025年12月発売)

その他

  • 予算区分 : 農林水産省(農林水産研究の推進 : 昆虫(カイコ)テクノロジーを活用したグリーンバイオ産業の創出プロジェクト)
  • 研究期間 : 2022~2025年度
  • 研究担当者 : 神戸裕介、亀田恒徳、島田裕太((株)あつまるホールディングス)、渕上博貴((株)あつまるホールディングス)、佐々木誠((株)チャーリーラボ)
  • 発表論文等 : 神戸ら「シルクフィブロイン固化物、シルクフィブロイン水系溶液およびその製造方法、ならびにゲル状固定材」WO2025/204578(2025年4月3日)