要約
アミノ酸認識能を改変したチロシル-tRNA合成酵素を用いる遺伝暗号拡張技術により、ハロゲン化チロシンを一次構造中に組み込んだシルクフィブロインをカイコで生産し、ハロゲン化チロシンの導入がフィブロインの耐熱性向上に効果があることを示す。
- キーワード : チロシル-tRNA合成酵素、遺伝暗号拡張、ハロゲン化チロシン、フィブロイン、耐熱性
- 担当 : 生物機能利用研究部門・絹糸昆虫高度利用研究領域・新素材開発グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
シルクフィブロインは生体適合性や機械的強度に優れ、アパレルや医療分野で幅広く利用されているが、さらなる機能性や物性の向上が求められている。本研究では、遺伝暗号拡張技術を用い、チロシンの誘導体であるハロゲン化チロシンを効率的にフィブロインに組み込むことのできる新規チロシル-tRNA合成酵素変異体を作出し、フィブロイン繊維の耐熱性を向上させることを目的とする。
成果の内容・特徴
- 大腸菌を用いる新たな選抜システムの開発により、ハロゲン化チロシンを認識する新規なチロシル-tRNA合成酵素変異体の作出が可能となる(図1)。
- チロシル-tRNA合成酵素変異体を絹糸腺で発現する遺伝子組換えカイコにハロゲン化チロシン(3-クロロチロシン、3-ヨードチロシン)を経口投与することで、ハロゲン化チロシン導入フィブロイン繊維の生産が可能となる(図2)。
- ハロゲン化チロシンの導入によってフィブロイン繊維の耐熱性が向上する(図3)。
成果の活用面・留意点
- 耐熱性が向上したフィブロイン繊維は、高機能テキスタイルや産業用途など幅広い分野での応用が期待できる。
- 遺伝暗号拡張技術を用いる人工アミノ酸の導入により、目的に応じた物性制御が可能となる。
- フィブロイン生産量や繊維の機械的特性への影響、導入する人工アミノ酸の安全性やコストなど、実用化に向けては追加検討が必要となる。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金
- 研究期間 : 2017~2024年度
- 研究担当者 : 寺本英敏、天野芳美(理研横浜)、小島桂、伊賀正年、坂本健作(理研横浜)
- 発表論文等 : Teramoto H. et al. (2025) Biomacromolecules 26:1053-1062