抗原含有シルクナノ粒子を用いた新たな動物用経口ワクチン素材製造技術

要約

シルクナノ粒子(nanoparticles : NPs)中に抗原を封入することで、胃酸や消化酵素による分解を回避し、腸管まで抗原を送達し、腸管の免疫応答を誘導できる経口ワクチン素材である。注射を必要とせず、動物の餌に混ぜて食べさせることでワクチン効果が得られる。

  • キーワード : シルクナノ粒子、経口ワクチン、抗原送達キャリア、腸管免疫
  • 担当 : 生物機能利用研究部門・絹糸昆虫高度利用研究領域・カイコ基盤技術開発グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

近年、抗菌剤(抗生物質および合成抗菌剤を含む)の不適切使用により、抗菌剤が効かなくなる薬剤耐性を持つ細菌の出現が、家畜衛生および公衆衛生上の大きな課題となっている。そこで本研究では、カイコ由来のシルクNPsをワクチンキャリアとして利用することを発案し、抗原を含有したシルクNPsを新たな動物用経口ワクチンとして利用する技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 繭(未精練シルク)および精練シルクからシルク水溶液を調製し、モデル抗原として使用する卵白アルブミン(ovalbumin : OVA)と混合して、さらに高濃度の塩に混ぜることでOVAを含有するナノ粒子(NPs)が形成される(図1)。粒子径は繭由来で100-500nm、精練シルク由来で300-1000nm程度である。
  • マウスへの経口投与により、抗原OVAに対する抗体(血中の抗OVA IgGおよび腸管内の抗OVA IgA)の産生が誘導される(図2)。
  • 蛍光色素fluorescein isothiocyanate(FITC)を標識したシルクNPsをマウスへ経口投与すると、胃を通過して、十分に腸管へ送達される(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 経口ワクチンの新規キャリアとして、抗原保護・腸管送達・免疫誘導の三要素を兼ね備える。
  • 精練シルク由来NPsはシルク成分に対する免疫応答を回避でき、医薬応用に適する。
  • 今後、様々な病原体由来抗原を封入したシルクNPsを作製し、各種動物(家畜、愛玩動物、魚類等)への投与試験を行い、有効性を検証し、社会実装を進めていく。

具体的データ

図1 抗原を含有したシルクナノ粒子の走査電子顕微鏡(SEM)画像,図2 抗原含有シルクナノ粒子を経口投与したマウスにおける抗原特異的な抗体産生の評価,図3 マウスへ経口投与した蛍光標識シルクナノ粒子の腸管送達の観察

その他

  • 予算区分 : PRISM、BRIDGE
  • 研究期間 : 2021~2025年度
  • 研究担当者 : 佐藤充、佐久間智理、小島桂、瀬筒秀樹
  • 発表論文等 :
    • Sato M. et al. (2026) Int. J. Nanomed. https://doi.org/10.2147/IJN.S557456
    • 佐藤、小島「フィブロイン含有ナノ粒子を含む経口投与型ワクチン用組成物」特許第7487992号(2024年5月13日)