酵素を固定化し、繰り返し利用できる機能性シルク

要約

機能性シルクであるスキャフォルディンシルクは、特定のアミノ酸配列を付与された酵素を特異的に固定化できる。60°Cまで酵素固定能を保持するため、繭から形成加工が可能である。将来的には、バイオリアクター基材としての活用が期待される。

  • キーワード : シルク、コヒーシン、ドッカリン、酵素固定化、バイオリアクター
  • 担当 : 生物機能利用研究部門・絹糸昆虫高度利用研究領域・カイコ基盤技術開発グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

酵素は、医薬品、食品、バイオ燃料などの製造に広く利用されているが、高価で流出しやすく、使用後の回収や再利用が難しいという課題がある。酵素を固定化したシルクを作製するには、酵素ごとに遺伝子組換えカイコを作る必要があり、柔軟な応用が困難である。そこで本研究では、細菌が酵素を足場構造に固定して反応を進める仕組みに着想を得て、酵素を後から選択的に取り付けられる新しい機能性シルクを開発する。

成果の内容・特徴

  • 「スキャフォルディンシルク」は、酵素を固定化する部位(コヒーシン)を含む足場構造を持つ(図1)。
  • 大腸菌等で合成した特定のアミノ酸配列(ドッカリン)が付加された酵素をスキャフォルディンシルクに固定化できる(図1)。
  • 「スキャフォルディンシルク」の結合能は約60度まで保持できるため、繭の形成加工が可能であり、工業利用も期待できる(図2)。
  • 異なる酵素を組み合わせて固定することで、連続反応による効率的な物質生産への応用が期待される。

成果の活用面・留意点

  • 多様な酵素を柔軟に結合させることができ、バイオ燃料生産や環境浄化に応用できる。
  • シルクを支持体として酵素を固定することで、反応産物による反応阻害や、酵素の沈殿・流出に伴う反応低下を抑制できる。
  • 複数の酵素を順序よく固定することで、連続反応への応用をめざす。

具体的データ

図1 スキャフォルディンシルクを産生する遺伝子組換えカイコ,図2 スキャフォルディンシルクの精練と結合能

その他

  • 予算区分 : 農林水産省(農林水産研究の推進 : 昆虫(カイコ)テクノロジーを活用したグリーンバイオ産業の創出プロジェクト)
  • 研究期間 : 2022~2025年度
  • 研究担当者 : 笠嶋めぐみ、伊賀正年、渡辺裕文、飯塚哲也
  • 発表論文等 :
    • Sumitani M. et al. (2025) J. Insect Biotechnol. Sericology 94:31-41
    • 飯塚ら「精練方法」特開2024-180314(2024年12月26日)