要約
卵子等の超低温保存技術であるガラス化法を、ブタ未成熟卵の異なる発生段階で複数回適用しても胚盤胞期まで発生可能である。ガラス化未成熟卵の受精等の処理後に再保存が可能となることで、遺伝資源保存やゲノム編集動物作出等への活用が期待される。
- キーワード : ブタ、遺伝資源保存、未成熟卵、体外成熟・受精、再ガラス化
- 担当 : 生物機能利用研究部門・生物素材開発研究領域・動物モデル・機能利用開発グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
生殖細胞の保存技術は、希少動物や優良家畜などの遺伝資源の保護において重要であり、家畜では、これまでに精子や受精卵などの凍結保存技術が開発されている。ブタでは受精前の精子の超低温保存技術は確立されている一方、雌性生殖細胞である卵子を受精前の状態で保存する手法についてはこれまでに様々な検討が行われている。我々の2014年の成果により、ガラス化法を用いて未成熟卵(受精能を獲得する前の状態の卵子)が保存可能であり、そのガラス化卵子由来でブタ個体が作製可能であることが示されている。さらに、ガラス化保存した未成熟なブタ卵子を成熟・受精した後、再度ガラス化保存(図1)が可能となると、ガラス化保存卵子の遺伝資源保存や胚操作における応用可能性が飛躍的に高まることが期待される。
成果の内容・特徴
- 受精後の前核期(細胞分裂までの時期)における再ガラス化によって発生率は低下するものの、胚盤胞(着床可能な状態)まで発生可能である(図2)。
- ガラス化保存した未成熟卵を再度ガラス化保存する場合、前核期よりも胚盤胞期で実施することでより生存性が高まる。
- 未成熟卵期、あるいは前核期のガラス化は、胚盤胞期のガラス化後の生存率に影響を及ぼさない(図3)。
成果の活用面・留意点
- 未成熟期、前核期、胚盤胞期において計3度ガラス化した胚が生存性を維持して胚盤胞まで発生することを示した世界初の報告例である。
- ガラス化未成熟卵を受精後に再度保存できることで、体外受精やゲノム編集などの人為的な操作が胚移植のタイミングに縛られずに随時実施可能となり、ブタ雌性生殖細胞の遺伝資源保存やゲノム編集動物作出等への活用がさらに進展することが期待される。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 文部科学省(科研費)
- 研究期間 : 2024~2025年度
- 研究担当者 : Nguyen H.T.(ベトナム科学技術アカデミー)、中井美智子、千本正一郎、Bui N.X.(ベトナム科学技術アカデミー)、Nguyen U.T.(ベトナム科学技術アカデミー)、菊地和弘(北里大学)、原口清輝、Nguyen L.V.(ベトナム科学技術アカデミー)、Nguyen H.T.(ベトナム科学技術アカデミー)、Nguyen N.T.(ベトナム科学技術アカデミー)、Van Nguyen H.(ベトナム科学技術アカデミー)、Luu D.T.(ベトナム科学技術アカデミー)、Somfai Tamas
- 発表論文等 : Nguyen H.T. et al. (2025) Anim. Sci. J. 96:e70103
doi:10.1111/asj.70103