要約
メロンのゲノム編集は、細胞培養を経た個体再生が困難なため、成功例が少ない。培養を用いない新しいゲノム編集技術in planta Particle Bombardment法をメロンに適用することにより、高効率でゲノム編集メロンを作出することができる。
- キーワード : メロン、ゲノム編集、日持ち性、細胞培養、iPB法
- 担当 : 生物機能利用研究部門・作物ゲノム編集研究領域・ゲノム編集作物開発グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
果実の日持ち性は、出荷のタイミング、流通時のコスト、輸出等による遠隔市場への輸送適正等を左右する重要な形質である。国産メロンについては、その品質の高さが国内外で認知されているものの、日持ち性は低く、長距離輸送は困難である。そこで国産メロンの流通拡大に向けて、高級フルーツとして知られ輸出先等での消費拡大が見込まれる「マスクメロン」の日持ち性の改良が求められている。特徴的な舌触りや味をもつマスクメロンの改良にあたっては、日持ち性のみをピンポイントで改変できるゲノム編集が有効であると考えられる。しかしメロンでは、ゲノム編集の過程で用いる細胞培養によりDNAの変異およびそれに起因する生育異常が起こりやすいことが知られており、その適用は極めて困難である。そこで本研究では、培養を用いないゲノム編集技術in planta Particle Bombardment(iPB)法をメロンに適用させることにより、日持ち性が向上したマスクメロン系統の作出を目指す。
成果の内容・特徴
- 高級マスクメロンの標準品種「アールスフェボリット春系3号」をゲノム編集の材料とし、ゲノム編集のターゲット遺伝子はエチレン(果実を成熟させるガス状の植物ホルモン)の生合成遺伝子CmACO1である(図1)。
- iPB法をメロンに適用することによりCmACO1がゲノム編集されたメロンを高効率(1.32%)で作出することができる(図2)。
- cmaco1ゲノム編集メロンの収穫後果実から放出されるエチレン量は元品種と比較して著しく減少する(図3A)。また、ゲノム編集メロンは収穫後1ヶ月以上経ってもその果皮は緑色で果肉も硬い状態を維持しており、日持ち性は向上する(図3B)。
- エチレン処理は、成熟した元品種と同程度の果肉の軟化や果汁量の増加をもたらすため、ゲノム編集メロンを人工的に成熟させることができる。(図4)。
- 高日持ち性で食べ頃を調整できるメロンをiPB法によるゲノム編集で高効率に作出できる。
成果の活用面・留意点
- 本技術で作出した高日持ち性メロンは、成熟具合に左右されずに出荷のタイミングを調整できる、流通過程での鮮度保持にかかるコストを削減できる等の流通面におけるメリットがある。一方、消費者や販売業者にとっては、長期間保存でき、かつ任意のタイミングで食べ頃を作り出せるメリットがある。
- 作出した高日持ち性メロンは、ゲノム編集作物として関係省庁へ届出することで、一般栽培と商業利用が可能である。
- 本ゲノム編集技術は、メロンと同じウリ科作物であるキュウリ、スイカ等のゲノム編集にも利用できる可能性がある。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、SIP
- 研究期間 : 2020~2025年度
- 研究担当者 : 佐々木健太郎、浦野薫、耳田直純(サナテックライフサイエンス(株))、野中聡子(筑波大)、江面浩(筑波大)、今井亮三
- 発表論文等 : Sasaki K. et al. (2025) Front.Genome Ed. 7:1623097
doi:10.3389/fgeed.2025.1623097