土中のイネ根系の成長様式を非破壊で計測できるプラットホーム

要約

本プラットホームはイネを植えた栽培ポットを連続してX線CT撮影することにより、イネ根系の成長様式を非破壊で効率的に計測する。根系の環境ストレスへの応答が経時的に評価でき、異常気象に強い品種の育成などへの利用が期待できる。

  • キーワード : 計測技術、4次元解析、3次元データ、画像解析、フェノタイピング
  • 担当 : 作物研究部門・作物デザイン研究領域・作物デザイン開発グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

作物根系の環境ストレスに対する応答を計測することは、異常気象に強い品種を育成するために重要である。根系は土の中にあることから、非破壊で土中を撮影できるX線CTなどの装置を用いた解析が必要である。しかし、時系列のCT画像は4次元(3次元+時間)の情報を処理する必要があり画像解析が難しい。そこで、本研究ではイネを研究材料として、4次元のCTデータから根系の成長様式を計測できる解析法を開発する。

成果の内容・特徴

  • これまでの方法と比較し、今回の方法では根系の形情報の抽出ステップを最終日のデータを除いて自動化することにより4次元画像を取得する(図1)。イネ根系の成長様式を画像として捉えることができる(図2)。
  • 個々の根の形情報から、イネ根系の成長様式を数値化することが可能である。例として、生育初期と後期に生え始めた根を比較すると、生育後期の根の伸びが速いことが分かる(図3)。
  • 撮影回数が多いほど労力の削減が見込める。経時的に撮影した21のCT画像を用いると、人の介入が必要な画像解析作業が95 %削減できる。

成果の活用面・留意点

  • いままで取得することが困難であった環境ストレスに対する根系の応答を定量的に評価することが可能となる。これにより環境ストレスに頑健な品種の根系形態を解析でき、異常気象に強い品種育成に活かせる。
  • 原理上、病害応答など、環境ストレス応答以外への応用や、イネに限らず様々な作物に応用が可能である。
  • 作物を繰り返しCT撮影する必要があり、撮影時間が律速となる。

具体的データ

図1 これまでと今回の方法の比較,図2 播種後7日目から27日目までのイネ根系の4次元画像,図3 図2の画像から計算された定量化の一例 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

その他

  • 予算区分 : 交付金、文部科学省(戦略的創造研究推進事業:環境変動に対する植物の頑健性の解明と応用に向けた基盤技術の創出)
  • 研究期間 : 2018~2022年度
  • 研究担当者 : 寺本翔太、宇賀優作
  • 発表論文等 : Teramoto S. et al. (2022) Plant Methods. 18:133