温暖地向け豆腐用多収大豆新品種「そらみずき」

要約

「そらみずき」は米国品種を交配母本に用いて育成した多収の大豆品種で、難裂莢性や葉焼病抵抗性を有する。現地実証試験では既存品種と比較して3割以上多収である。粗タンパク含有率や豆腐の破断強度は「フクユタカ」より低いものの、豆乳抽出率は同等で、豆腐の加工に利用できる。

  • キーワード : ダイズ、多収、難裂莢性、葉焼病抵抗性、豆腐
  • 担当 : 作物研究部門・畑作物先端育種研究領域・畑作物先端育種グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

大豆の自給率は食品用に限っても2割程度で、需要の多くを輸入に依存しているため、食料安全保障の観点から自給率向上は喫緊の課題である。日本品種の単収は約160kg/10aと低く、多収品種の育成や栽培技術の改善等による単収の向上と生産コストの低減で、輸入大豆を国産大豆に置き換えることが望まれている。一方、米国品種の単収は日本の約2倍であるが、主に搾油用で国産大豆の主用途である豆腐の加工適性に影響を及ぼす粗タンパク含有率が低い傾向にある。そこで、収量が高い米国品種と加工適性が高い日本品種との交配から、豆腐への加工に利用でき、国産大豆への置き換えに貢献できる多収品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「そらみずき」は「作系76号」(後の「フクユタカA1号」)を種子親、米国品種「UA4805」を花粉親とする交配組合せから育成された品種である。
  • 育成地における試験では、成熟期は6月播および7月播のいずれにおいても「サチユタカA1号」とほぼ同じであり、「サチユタカA1号」と比較して6月播では11%多収、7月播では5%多収である(表1)。
  • 生産者圃場における現地実証試験では栽培地域の普及品種「里のほほえみ」や「フクユタカ」より3割以上多収であることから、栽培適地は関東~近畿地域である(表2)。
  • 裂莢性は"難"であり、温暖化に伴い発生が増えてきた葉焼病に対して"抵抗性"である(表1)。
  • 百粒重は「サチユタカA1号」と比較して、6月播では約15g軽く、7月播では約14g軽い。種子のへそ色は"淡褐"である(表1、図1)
  • 育成地や現地試験の生産物の粗タンパク含有率は「フクユタカ」と比較してやや低く、豆腐の破断強度はやや低いものの、豆乳抽出率は同等で豆腐への加工に利用できる(表1、表2、表3)。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : 大豆生産者、豆腐等の加工事業者、普及指導機関。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 関東、東海、近畿地域の「フクユタカ」及び「サチユタカ」の一部置き換えや新たな産地形成により2025年までに200haを見込む。
  • その他 : ダイズモザイクウイルスやダイズシストセンチュウに対して感受性であるため、同病虫害の発生が認められる圃場での作付けは避ける。

具体的データ

表1 育成地における試験成績,表2 現地実証試験成績,図1. 「そらみずき」の子実の外観,表3 豆腐加工適性試験成績

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(国際競争力強化技術開発プロジェクト:輸出促進のための新技術・新品種開発)
  • 研究期間 : 2011~2023年度
  • 研究担当者 : 加藤信、青木恵美子、南條洋平、猿田正恭、山崎諒、高橋浩司、山田哲也、髙橋幹、 湯本節三、菱沼亜衣、羽鹿牧太、平田香里、山田直弘
  • 発表論文等 :
    • 加藤ら(2023)農研機構研究報告、16:43-64
    • 加藤ら「そらみずき」品種登録出願公表第36804号(2023年8月10日)