オオムギ縞萎縮病およびオオムギ萎縮病に抵抗性の麦茶用大麦新品種「カシマホープ」

要約

麦茶用六条大麦新品種「カシマホープ」は、早生で多収、かつオオムギ縞萎縮病およびオオムギ萎縮病に抵抗性であり、これらの病害が発生する圃場でも収量を確保できる。成熟期以降の稈折損が発生しにくく、整粒歩合が高く、「カシマゴール」と同程度の麦茶加工適性を有する。

  • キーワード : 六条大麦、オオムギ縞萎縮病、オオムギ萎縮病、稈折損、麦茶加工適性
  • 担当 : 作物研究部門・畑作物先端育種研究領域・畑作物先端育種グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

麦茶飲料の生産量は、健康志向の高まりや商品開発、夏季気温上昇などを背景に、平成25年からの10年間で3倍以上に増加している。輸入大麦の価格高騰も相まって、実需者評価の高い国産の麦茶用大麦の需要は急増している。実需者による麦茶加工適性の評価が高い六条皮性大麦品種「カシマゴール」は、同じく実需者評価が高いもののオオムギ縞萎縮病およびオオムギ萎縮病に弱い品種「カシマムギ」に代わり、作付面積を拡大した品種である。しかし「カシマゴール」はオオムギ縞萎縮病には抵抗性を示す一方で、オオムギ萎縮病には罹病性のため、同病害が発生する圃場での被害が大きく、安定生産が困難になっている。このため、オオムギ縞萎縮病およびオオムギ萎縮病に抵抗性で、栽培性および収量性が優れ、「カシマゴール」と同等の麦茶加工適性を有する多収品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「カシマホープ」(旧系統名 : 関東皮106号)は、早生で多収かつ麦茶加工適性が優れる「カシマゴール」に、オオムギ縞萎縮病およびオオムギ萎縮病にも抵抗性の「関系b564」を交配し、さらにもう一度「カシマゴール」を交配して、集団育種法により育成した。六条、渦性、皮性の麦茶用大麦品種である。
  • 「カシマゴール」および「カシマムギ」と比べて、出穂期と成熟期は同程度の早生で、稈長と穂長は同程度である(畑地ドリル播標肥栽培、表1A、図1)。穂数は「カシマゴール」より少なく、「カシマムギ」と同程度である(表1A)。整粒重は「カシマゴール」と同程度に多収で「カシマムギ」より1割多く、整粒歩合は「カシマゴール」より高く「カシマムギ」よりやや低い(表1A)。麦茶加工適性は「カシマゴール」および「カシマムギ」と同程度であり(表1B)、実需者における麦茶焙煎試験においても同等の品質と評価された。
  • オオムギ縞萎縮病のウイルス系統IIIIII型、およびオオムギ萎縮病に"極強"である(表1C、図2)。うどんこ病抵抗性は"やや強"で、赤かび病抵抗性は"やや弱"である(表1C)。耐倒伏性は"強"、成熟期以降の稈折損性は"難"、穂発芽性は"極難"で、「カシマゴール」および「カシマムギ」より優れる(表1C、図3)。
  • オオムギ縞萎縮病およびオオムギ萎縮病が発生する圃場では、両病害に罹病性の「カシマムギ」およびオオムギ萎縮病に罹病性の「カシマゴール」は、稈長が短く、整粒歩合が低く、整粒重はかなり小さい(水田条播標肥栽培、表1A)。一方両病害に抵抗性の「カシマホープ」では高い収量を確保できる(表1A)。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : 大麦生産者、麦茶加工事業者。
  • 普及予定地域・普及予定面積 : 関東から東海地域の平坦地の1,500ha。
  • 2026年4月に、茨城県で奨励品種として採用された。
  • その他 : 赤かび病抵抗性が"やや弱"のため、防除適期に殺菌剤を散布する。分げつ期の葉色が淡いため、葉色から追肥の時期および量を決定する際には注意する。凍上害の発生が予測される地域や土壌では踏圧を励行する。病害抵抗性は圃場検定で実施のため、遺伝子型は不明である。

具体的データ

表1 「カシマホープ」の生育、収量、品質特性および病害・障害耐性,図1 「カシマホープ」の株(左)と穂(右上)と粒(右下),図2 オオムギ縞萎縮病およびオオムギ萎縮病の発生圃場における両病害の発生状況,図3 成熟期以降の稈折損の差異

その他

  • 予算区分 : 交付金、その他外部資金(一般社団法人全国米麦改良協会:国内産麦の研究開発支援事業)
  • 研究期間 : 2011~2025年度
  • 研究担当者 : 高橋飛鳥、小島久代、青木恵美子、岡田岳之、髙田昌汰、塔野岡卓司、清水浩晶、柳澤貴司、平将人
  • 発表論文等 : 高橋ら「カシマホープ」品種登録出願公表第37826号(2025年5月14日)