「しゅんよう」由来のコムギ縞萎縮病抵抗性に関与するQTLの同定と集積効果

要約

小麦品種「しゅんよう」は、コムギ縞萎縮病に対する抵抗性に関わる3つの量的形質遺伝子座(QTL)を有する。これらの抵抗性遺伝子の集積によって、コムギ縞萎縮ウイルスI~III型の異なる病原型のウイルスに対しても強固な抵抗性が付与される。

  • キーワード : コムギ縞萎縮病、抵抗性、QTL、遺伝子集積、しゅんよう
  • 担当 : 作物研究部門・畑作物先端育種研究領域・畑作物先端育種グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

コムギ縞萎縮病は、コムギ縞萎縮ウイルス(wheat yellow mosaic virus : WYMV)によって引き起こされる重要病害の一つであり、抵抗性品種の育成が強く望まれている。小麦品種「しゅんよう」は、国内で発生する全てのWYMV病原型(I~III型)に対して極めて強い抵抗性を示すことが明らかとなっている。しかし、既知のQTLでは「しゅんよう」の抵抗性を説明することができず、その遺伝的な背景は未解明である。このため、育種への効率的な利用は困難である。そこで本研究では、「しゅんよう」と感受性品種「きたほなみ」の交配から作成した半数体倍加(DH)系統群を用いて抵抗性に関与するQTLを解析し、コムギ縞萎縮病抵抗性育種に資する新たな遺伝領域を同定することを目的とする。

成果の内容・特徴

  • WYMV-I型発生圃場で実施したQTL解析によって、これまで報告のない主要な3つのQTL(QYm.naro-2A、QYm.naro-6D、QYm.naro-7A)が検出され、「しゅんよう」型のアリルが抵抗性を向上させる(図1)。
  • WYMV-I~III型発生圃場で3つのQTLの遺伝子型別に抵抗性を評価したところ、3つのQTLを集積した系統は、国内で発生する全てのWYMV病原型(I~III型)に対して「しゅんよう」と同程度の強固な抵抗性を示す(図2)。
  • QTL近傍のKompetitive Allele-Specific PCR(KASP)マーカーによって抵抗性アリルを識別でき、効率的に抵抗性の導入と選抜ができる。

成果の活用面・留意点

  • QTL近傍のKASPマーカーを用いることで、抵抗性系統を効率的に選抜できる。
  • QTL領域が広いため、抵抗性の導入の際には、QTL領域をカバーする複数のKASPマーカーを使う必要がある。
  • QYm.naro-7AはWYMV-III型に対して効果が低い可能性がある。単独のQTLでは発病のリスクがあるため、複数のQTLを組み合わせて利用する。

具体的データ

図1 WYMV-I型抵抗性に関わるゲノム領域,図2 WYMV-I~III型に対する3つのQTLアリルの抵抗性への効果

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(技術でつなぐバリューチェーン構築のための研究開発のうち「強み」を生み出すための品種等の開発 : 実需者等のニーズに応じた加工適性と広域適応性を持つ小麦・大麦品種等の開発)、民間資金等(一般社団法人全国米麦改良協会 : 国内産麦の研究開発支援事業)
  • 研究期間 : 2013~2025年度
  • 研究担当者 : 髙田昌汰、石川吾郎、前島秀和(長野県農試)、上原泰(長野県農試)、恒川健太(愛知県農総試)、鈴木良地(愛知県農総試)、加藤周平(愛知県農総試)、坂紀邦(愛知県農総試)、相馬ちひろ(道総研)、谷中美貴子、中村和弘、松中仁、乙部千雅子、八田浩一、小島久代、小林史典
  • 発表論文等 : Takata S. et al. (2025) Theor. Appl. Genet. 138, 230