要約
日本の大豆品種と海外の大豆品種はゲノム全体に大きな違いが有り、莢の弾けにくさを制御する遺伝子や粒大と関連するQTLの型は、日本と海外の品種で分布が異なる。型の異なる遺伝子やQTLを組合せることで日本と海外の品種の優れた点を兼ね備えた系統の効率的な作出が可能である。
- キーワード : 大豆、大規模ゲノム情報、粒大、難裂莢性、遺伝子型、QTL
- 担当 : 作物研究部門・作物デザイン研究領域・作物デザイン開発グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
我が国では、食品用大豆の75%を海外からの輸入に依存しており、食料安全保障の観点から、大豆の自給率向上が求められている。自給率向上には、単位面積当たりの収量を向上させることが重要である。日本品種と海外品種は特徴が異なり、それぞれ高い子実品質、多収性の点で優れている。それらを交配によって効率的に組合せるため、国内外の大豆品種のゲノム情報を収集し、収量や子実品質の違いをもたらす遺伝子群を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 日本の140品種と海外の322品種の概要ゲノム塩基配列全体を比較すると、両者には大きな違いが有り、特に日本品種と米国品種の間には明確な隔たりがある(図1)。
- 多収性に重要な機械収穫適性をもたらす難裂莢性遺伝子は、海外品種では54%が難裂莢型(pdh1)だが、日本品種では4%のみが難裂莢型である(図2)。
- 子実品質として重要な粒大は、第4番染色体上に見出された量的形質遺伝子座(QTL、図3左)が日本の大豆品種では約62%が大粒型(A型)であり(図3右)、特に粒の大きい8品種(丹波やだだちゃ豆等)は全てA型である一方、海外の品種では約91%が小粒型(B型)である。
成果の活用面・留意点
- 得られた大規模ゲノム情報により、日本や米国など各国の品種の特徴を決める遺伝子やQTLの違いの理解が進み、日本品種の子実品質を損なわずに収量性が改善された新品種の育成に活用できる。
- 図3は、粒大に対する効果が大きく日本と海外で分布の大きく異なる1つのQTLについての調査結果である。粒大は多数の遺伝子で制御されており、粒大をデザインするには、他のQTLや遺伝子と組合せる必要がある。
- 他にも多くの遺伝子やQTLの分布が日本品種と海外品種の間で異なっているが、形質との関連付けは今後の課題である。
- 図2に示した日本品種は20世紀以前の品種が中心であり、最近は難裂莢性の品種が徐々に増えている。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(戦略的プロジェクト研究推進事業 : 民間事業者等の種苗開発を支える「スマート育種システム」の開発)、SIP、経済産業省(ムーンショット型研究開発事業)、文部科学省(戦略的創造研究推進事業)
- 研究期間 : 2021~2025年度
- 研究担当者 : 矢野亮一、李鋒、平賀勧、竹島亮馬、小林光智衣、戸田恭子、梅原洋佐、鐘ヶ江弘美、加賀秋人、石本政男、岩田洋佳(東大)
- 発表論文等 : Yano R. et al. (2025) Nat. Genet. 57:973-985
doi:10.1038/s41588-025-02113-5