要約
夏季晴天日のリンゴおよびウンシュウミカンの日最高果実表面温度は、主に日最高気温と果実の大きさに依存し、果実が大きいほど高く、最大で日最高気温よりも15°C程度高くなる。
- キーワード : 果実表面温度、果実の大きさ、日焼け、リンゴ、ウンシュウミカン
- 担当 : 果樹茶業研究部門・果樹生産研究領域・果樹スマート生産グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
日焼けは果実表面温度が極端な高温になることにより果皮が褐色になる生理障害であり、果実品質を著しく低下させる。近年の温暖化に伴う気温上昇により、日焼けは世界各地の果樹産地で問題となっており、適切な対策を講じるための日焼け発生予測技術の開発が求められている。これまで気温などの気象要素から日焼け発生を予測する技術が開発されてきたが、日焼け発生に直接的な影響を及ぼすのは気温でなく果実表面温度である。
そこで本研究では、より高精度な日焼け発生予測技術の開発に向けて、果実表面温度と気象などとの関係を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 夏季晴天日に、農研機構果樹茶業研究部門(茨城県つくば市:北緯36度02分、東経140度05分)において、摘果した大きさの異なる複数のリンゴ「ふじ」およびウンシュウミカン「崎久保早生」を設置し、各果実の4方位(東、南、南西、西)の赤道面からの仰角45°の位置の表面温度と気温、横径を測定する。果実は数日おきに交換する。
- 夏季晴天日の果実表面温度は、南西または西の方角で13時から14時頃に最大となる(図1)。
- 各日における果実ごとの表面温度の最高値(日最高果実表面温度)は、日最高気温が高いほど高く、晴天日には日最高気温よりも最大で15°C程度高くなる。
- また、日最高果実表面温度は、平均よりも小さい果実に比べて、大きい果実においてその値が高い(図2)。
- 以上より、夏季晴天日の果実表面温度は気温などの気象要素に加えて、果実の大きさの影響を受ける。
成果の活用面・留意点
- 本成果を活用することにより、気象要素のみから推定を行っていた従来の手法に比べて、より高精度な果実温度推定技術の開発が可能になる。
- 果実温度が果実の大きさに依存することには、果実と大気の間の熱のやり取りが影響しているため、本手法は他の樹種にも応用できる可能性がある。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 農林水産省(戦略的スマート農業技術等の開発・改良)
- 研究期間 : 2022~2024年度
- 研究担当者 : 紺野祥平、杉浦俊彦
- 発表論文等 :
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紺野祥平、杉浦俊彦、特願(2023年6月27日)
- Konno S. et al. (2024) J. Agric. Meteorol. 80: 57-61