要約
「サニーハート」は、糖度が高く酸含量が低く食味良好で、皮ごと食べられる赤色ブドウである。ジベレリン処理により種なし生産が可能である。
- キーワード : ブドウ新品種、良食味、皮ごと食べられる、無核果生産
- 担当 : 果樹茶業研究部門・果樹品種育成研究領域・落葉果樹品種育成グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 普及成果情報
背景・ねらい
現在の主要な生食用ブドウ品種は、果皮色が緑の「シャインマスカット」と黒の「巨峰」と「ピオーネ」であり、これらの3品種で全生食用ブドウの栽培面積の約6割を占めている。生食用ブドウの需要の拡大のためには果皮色など外観が異なり、さらに食味良好な新品種が望まれている。また、最近は皮ごと食べられる種なしブドウに対する要望も強い。そこで「シャインマスカット」や「巨峰」とは異なる外観を持ち、食味良好で皮ごと食べられる、種なし栽培可能な品種育成を図る。
成果の内容・特徴
- 2003年に果樹茶業研究部門において、626-84(103-37(「カッタクルガン」×「高砂」)×安芸津7号(「高砂」×「キャンベルアーリー」))に「シャインマスカット」を交雑して得られた実生から選抜した2倍体品種である。
- 2018年から2022年まで系統番号「安芸津32号」としてブドウ第15回系統適応性検定試験に供試してその特性を検討した結果、2023年2月の同試験成績検討会において新品種候補として適当であるとの結論が得られ、2023年11月13日に出願番号第37121号として品種登録出願を行い、2024年3月19日に出願公表されている。
- 樹勢は「安芸クイーン」より強い(表1)。開花期は「巨峰」と同時期、収穫期は8月下旬から9月上旬で「安芸クイーン」や「巨峰」より遅い。ジベレリン処理果の果粒重は11g程度で「安芸クイーン」や「巨峰」より小さい。果皮が赤~紫赤色を呈する赤色ブドウで、果粒側面にくぼみが生じる特徴的な形を呈する(図1)。裂果は年によってはわずかに発生する。果肉や果皮に渋味は無く、果皮ごと食べられる。糖度は20%程度、酸含量は0.40g/100ml程度となり、果肉は崩壊性でかみ切りやすく、やや硬く、食味良好である。マスカット香の混じるフローラルな香りを有する。
- ジベレリン25ppmの満開時と満開10~15日後の花(果)房浸漬処理による無核化率は高い。開花前にストレプトマイシン200ppmを散布することにより、さらに安定した種なし生産が可能である。
普及のための参考情報
- 普及対象 : ブドウ生産者。
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 東北から九州までのブドウ栽培地域。
- その他 : 穂木供給は品種登録後に開始される。東北北部においては凍害が発生することがある。着果および着粒過多により、着色ムラ等が発生する場合があることから、着房および着粒制限を適正に行い果房重を500g程度に抑えることが望ましい。場所や年により裂果が発生するので、成熟期後半の水分管理には留意し、極端な乾湿の変動を避ける。花振るいが少ないので、着粒性が良く密度が高いため、摘粒作業に労力を要する。モザイク萎縮葉症に類似した症状の発生が見られるが、果実品質や収量等への大きな影響は認められていない。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金
- 研究期間 : 2003~2022年度
- 研究担当者 : 齋藤寿広、佐藤明彦、河野淳、尾上典之、三谷宣仁、東暁史、伴雄介、山田昌彦、上野俊人、白石美樹夫、清水健雄、松﨑隆介、中島育子、伊藤隆男、上野豪俊、土師岳、千秋裕也
- 発表論文等 :
- 齋藤ら「サニーハート」品種登録出願公表第37121号(2024年3月19日)
- 齋藤ら(2024)園学研、23別2:315