完全甘ガキと非完全甘ガキをより正確に見分けるためのCAPSマーカー

要約

既存のSCARマーカーと新たに開発したCAPSマーカーを組み合わせることで、完全甘ガキを効率的に選抜する手法である。この手法は特定の非完全甘ガキ38品種を交配親に用いた際に、完全甘ガキのF1実生をより正確に識別するために役立つ。

  • キーワード : 甘ガキ、カキ、完全甘ガキ、DNAマーカー、マーカー選抜
  • 担当 : 果樹茶業研究部門・果樹品種育成研究領域・落葉果樹品種育成グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

果実が成熟するまでに自然と渋みが抜ける完全甘ガキは渋抜き処理が不要で手間がかからず、安定した甘みと品質が消費者に評価され、市場で高い需要がある。一方、完全甘ガキの品種開発では、近交弱勢による収量の低下が課題となっており、農研機構ではこの問題を回避するために、非完全甘ガキを交配親に利用し、交雑によって生まれたF1実生の中からSCAR(Sequence Characterized Amplified Region)マーカーを使って完全甘ガキ個体を幼苗段階で選び出している。しかし、このSCARマーカーでは、一部の非完全甘ガキを親として交雑する場合、非完全甘ガキ個体が完全甘ガキ個体と誤判定されることがある。このため、完全甘ガキと非完全甘ガキ個体をより正確に見分ける技術が求められている。本研究では、SCARマーカーのDNA断片を詳細に解析し、完全甘ガキ個体をより正確に選抜できる技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • SCARマーカーは、大部分の育種集団において非完全甘ガキ性と連鎖した断片を検出できるため、検出されない個体を完全甘ガキと判定できる。しかし、このマーカーは「吉田御所」など一部の品種が保有する非完全甘ガキ性因子を検出することができず、これらを親として交雑する場合、完全甘ガキ個体を誤判定する場合がある(図1A)。
  • キャピラリーDNAシーケンサーを用いて「吉田御所」を親とする交雑集団のSCARマーカー産物をフラグメント解析すると、完全甘ガキ性と連鎖するとされる353bp断片の低分子量側断片が非完全甘ガキ性と関連していることが分かる(図1B)。
  • SCARマーカー産物の353bp断片には4種類の多型配列(a353-1a353-2aa353-2b、およびa353-2cアレル)が見出されており、このうちフラグメント解析における低分子量側断片に相当するa353-1アレルのみが、制限酵素StuI切断部位を有する。
  • CAPS(Cleaved Amplified Polymorphic Sequence)マーカーは、SCARマーカー産物をStuI処理して、切り出されたa353-1アレルのうち蛍光ラベル標識された側の183bp断片の有無を判定することで構成される。非完全甘ガキ性に連鎖するSCARマーカーの220~250bpの断片に加えて、183bpの断片が検出されない個体のみを選び出すことにより、完全甘ガキ個体のより正確な選抜が可能である(図2)。
  • CAPSマーカーにより、非完全甘ガキ130品種のうち38品種がa353-1アレルを持つことが分かる(表1)。

成果の活用面・留意点

  • a353-1アレルを持つ38品種を親として用いた交配において、SCARマーカーに引き続いてCAPSマーカーを利用することで完全甘ガキ個体の選抜に利用できると期待される。「吉田御所」と「東洋一」以外が持つa353-1アレルが非完全甘ガキ性と連鎖しているかどうかは未確認のため、今後検証の必要がある。
  • フラグメント解析において、StuI処理をせず、353bpの低分子量側断片の有無で完全甘ガキ個体を識別できる場合もある。ただし、泳動条件によって低分子量側断片が他の353bp断片と明確に分離しない場合があるため、StuI処理する方が安定して識別できる。
  • 開発したCAPSマーカーはアガロースゲル電気泳動に未対応であり、キャピラリーDNAシーケンサーを用いたフラグメント解析のみ対応している。これはカキが六倍体であり、a353-1アレルがSCARマーカー増幅断片に占める割合が低く量が少ないため、アガロースゲル電気泳動の感度では検出が困難なためである。フラグメント解析は企業が提供する受託解析サービスを利用して実施できる。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2019~2024年度
  • 研究担当者 : 尾上典之、松﨑隆介、東暁史、齋藤寿広、清水健雄、佐藤明彦
  • 発表論文等 :
    • Onoue N. et al. (2024) Euphytica 220:137 doi:10.1007/s10681-024-03394-3
    • 尾上ら「カキの完全甘ガキ性と非完全甘ガキ性とを識別する識別方法、カキの完全甘ガキ性と非完全甘ガキ性との識別マーカー、及びカキの完全甘ガキ性と非完全甘ガキ性とを識別するためのキット」特許第7184378号(2022年11月28日)