要約
多変量解析によりリンゴの嗜好性に影響を与える香気成分を特定し、濃度を変化させて官能評価試験でその影響を調査した結果、(E,E)-α-farneseneは果実の嗜好性に影響を与えた。
- キーワード : リンゴ、香気成分、嗜好性、官能評価、Shapley additive explanations
- 担当 : 果樹茶業研究部門・果樹品種育成研究領域・落葉果樹品種育成グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
リンゴの香りは消費者の嗜好を決定する重要な要素の一つである。しかし、香気成分濃度と嗜好性の明確な関連を示す研究は少なく、香りの優れるリンゴ品種の開発を進めるためにはその解明を求められている。また、リンゴの香りは多数の成分から構成される複雑な性質を持つため、単純な相関分析では全体像を捉えきれない。本研究では、変数間の交互作用を捉えるのに適したTree-basedモデルを用いて多変量回帰を行い、Shapley additive explanations(SHAP)による回帰モデルの解釈を行う。これにより、香気成分が官能評価値に与える影響を定量的に解析し、嗜好性に影響する香気成分を特定する。
成果の内容・特徴
- RandomforestとXGBOOSTの2つの手法による多変量回帰分析を繰り返し実施し、すべてのSHAP値の平均値を算出した(図1)。これにより、回帰モデル作成時のデータの偏りの影響を排除し、香気成分ごとの嗜好性への影響の大きさを安定的に評価できる。
- SHAP平均値を用いた分析の結果、多変量回帰に用いた72成分の内、5-hexenol、ethyl 2-methyl butyrate、2-methylbutyl acetate、(E,E)-α-farnesene、(Z)-3-hexenolが嗜好性への影響が特に大きい香気成分である(図2)。
- これらの成分の濃度をそれぞれ変化させたリンゴ風味飲料を用いた、官能評価試験(一般パネル50人対象)では、(E,E)-α-farneseneの濃度が嗜好性に影響している(図3)。(E,E)-α-farneseneの濃度の増加はリンゴの嗜好性を低下させ、濃度の減少は嗜好性を高めると考えられる。
成果の活用面・留意点
- (E,E)-α-farneseneはリンゴの果皮や果実中に多く含まれる成分であり、品種間でその含量にばらつきが見られる。この成分を嗜好性向上のためのターゲットとして活用することで、香りの優れたリンゴ新品種の育成が期待される。
- SHAP平均値の分析により、官能評価得点への影響が顕著に現れる香気成分濃度域を推測できる。
- SHAP値の分析の正確性は、回帰モデルの精度に依存するため、検出された香気成分の効果を官能評価で検証する必要がある。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(先導プロジェクト)
- 研究期間 : 2016~2023年度
- 研究担当者 : 清水拓、服部雄飛(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)、大上将司(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)、今吉有里子、森谷茂樹(農林水産省)、岡田和馬、澤村豊、阿部和幸(東北農林専門職大)
- 発表論文等 : Shimizu T. et al. (2024) LWT. 115737