ブドウ交雑育種において裂果しにくい個体の出現率を効率的に推定する親子回帰モデル

要約

交雑に用いる親品種の裂果性および果肉特性から、裂果しにくい個体の出現率を予測する数理モデルである。このモデルの利用により、裂果しにくい子個体の出現率を効率的かつ精度高く推定できるため、ブドウ育種における交配計画の策定に有用である。

  • キーワード : 生食用ブドウ、交雑育種、裂果性、平均親値
  • 担当 : 果樹茶業研究部門・果樹品種育成研究領域・落葉果樹品種育成グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

ブドウの裂果は果実の商品価値を著しく低下させる要因の一つであり、外観の劣化や果汁漏出に起因する腐敗リスクを高める。これまで、裂果性の遺伝的な要因に関する研究は進んでおらず、育種における交配計画の基盤となる遺伝モデルの構築が求められている。本研究では、交雑親とその子集団の裂果性データを解析し、交雑親の裂果性および果肉特性から裂果しにくい個体の出現率を推定可能な数理モデルを構築する。

成果の内容・特徴

  • 交雑実生58家系1410個体および交雑親のデータから裂果性の遺伝について解析すると、交雑親が裂果しやすいと、裂果しにくい個体の出現率は低下する傾向がみられる(図1)。
  • アメリカブドウまたは欧米雑種間の交雑集団では裂果しにくい個体の出現率が高い一方で、ヨーロッパブドウ間の交雑集団ではその出現率が低い傾向がみられる(図1)。これは、アメリカブドウは裂果しにくい、ヨーロッパブドウが裂果しやすい特性を反映していると考えられる。
  • 裂果しにくい個体の出現率予測数理モデルの数式は次の通りである。裂果しにくい個体出現率(%)=100÷(1+exp(-0.072+0.707×交雑親の裂果性平均値-1.145×交雑親の果肉特性平均値))
  • 親品種の果肉特性(肉質)の平均値もモデルに組み込むことで、予測精度が26%向上することが確認されたため、交雑親の裂果性の平均値から交雑集団の裂果しにくい個体の出現率を推定することを目的とした本数理モデルに果肉特性の平均親値を採用している(図2)。
  • 本数理モデルを利用して、両親ともに裂果しにくい品種を交雑親に利用した場合、裂果しにくい個体の出現率は果肉特性の平均値に応じて51.8-91.4%であると推定されている。

成果の活用面・留意点

  • 本数理モデルを利用することで、裂果しにくい個体を十分な規模で確保するための交配計画を策定することができる。たとえば、両親ともに裂果しにくく、果肉特性が崩壊性の組合せでは裂果しにくい個体の出現率は51.8%となる。仮に30個体の裂果しにくい個体を獲得するためには、最低58個体以上の交雑集団を育成する必要がある。
  • 裂果性は環境変動の影響を受けやすいため、交雑親の裂果性は最低3年以上の評価を行い、その平均値および平均親値を算出することが推奨される。
  • 裂果性は次の通り評価。なし(裂果粒率0%):0、少(裂果粒率10%未満):1、中(裂果粒率10%以上20%未満):2、多(裂果粒率20%以上):3。
  • 果肉特性は次の通り評価。崩壊性(嚙み切り易い):0、中間:1、塊状(噛み切りにくい):2。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2019~2022年度
  • 研究担当者 : 松﨑隆介、尾上典之、東暁史、佐藤明彦(近畿大)
  • 発表論文等 : 松﨑ら(2022)園学研、21:269-278