リンゴのみつ入り主働遺伝子候補MdSWEET12aを検出するDNAマーカー

要約

祖先品種「デリシャス」に由来する糖トランスポーター遺伝子MdSWEET12aを保有するリンゴ個体は、果実がみつ入りしやすくなる。この遺伝子の保有の有無は、DNAマーカー「MdSWEET12a-D」により判定できる

  • キーワード : ゲノムワイド関連解析、RNA-seq、ソルビトール、糖トランスポーター
  • 担当 : 果樹茶業研究部門・果樹品種育成研究領域・果樹茶育種基盤グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

リンゴのみつは、果実の成熟を示す指標のひとつであり、フルーティで華やかな香りの源として風味向上に貢献している。しかし、長期保存を行うとみつ部分が褐変し、商品価値を損なうことがある。みつの入りやすさには品種間差があり、「ふじ」や「はるか」ではみつが入りやすい一方で、「シナノゴールド」や「きおう」ではみつが入りにくい。リンゴの品種育成において育種実生のみつ入りを評価するためには、幼若期間の長い果樹の特性上、長期の栽培が必要となるが、幼苗期にDNAマーカーを用いて判定することで、みつの入りやすい年内消費向けの品種や、みつの入らない長期保存向けの品種など、用途に応じた効率的な品種育成が可能となる。
本研究では、みつ入りとゲノム情報との大規模関連解析により原因遺伝子領域を絞り込み、みつの入る品種と入らない品種で遺伝子発現量を比較することで、原因遺伝子を推定する。また、この遺伝子をDNAマーカーで検出することで、遺伝的にみつの入りやすい個体を選抜する技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • リンゴの品種および交雑個体2,739樹を対象としたゲノムワイド関連解析により、第14番染色体にみつ入りに関与する主働遺伝子領域が検出される(図1)。この領域が祖先品種「デリシャス」に由来する場合、みつ入りの程度が高くなる。
  • 主働遺伝子領域に座上する775遺伝子のうち、みつ入り程度に差のある2つの品種セット(セット1:みつの入りやすい「ふじ」、「はるか」と入らない「国光」、「シナノゴールド」。セット2:みつの入りやすい「ふじ」、「こうたろう」と入らない「ゴールデンデリシャス」、「あおり27」)の成熟果実において発現量が有意に異なるのはMdSWEET12aのみである(図2A、B)。また、MdSWEET12aの発現は果実の成熟に伴い上昇する。
  • みつは果実の維管束部を中心に、糖アルコールであるソルビトールが水分とともに細胞間隙に蓄積することで発生すると考えられている。MdSWEET12aは糖の細胞内外双方向輸送を担うトランスポーターで、成熟果実の維管束部で特異的に発現すること、また、その発現を抑制することで果実のソルビトール含量が減少することが知られている。
  • MdSWEET12aの19kbp下流に存在する「デリシャス」特異的な58bpの欠失配列を基に作成したDNAマーカー「MdSWEET12a-D」は、アガロースゲル電気泳動で検出できる(図3)。このDNAマーカーにより欠失配列が確認された個体の89%(36個体中32個体)はみつが入りやすく(みつ入り指数>1.1)、欠失配列が確認されなかった個体の77%(122個体中94個体)はみつが入らない(みつ入り指数≤1.1)(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 本研究のDNAマーカーは、日持ち性のDNAマーカー(PG1)などと併用することで、みつの入りやすい年内消費向けの品種、みつの入らない長期保存向けの品種を効率的に作り分けることができる。
  • 「紅玉」に由来するMdSWEET12aを持つ個体にもみつが入る場合がある。
  • みつの発生は栽培環境に大きく依存するため、本技術で「みつが入りやすい」と判定された個体の結実果すべてにみつが入るとは限らない。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(農林水産研究の推進:みどりの品種開発加速化プロジェクト)、文部科学省(科研費)、SIP
  • 研究期間 : 2015~2024年度
  • 研究担当者 : 國久美由紀、南川舞(千葉大)、矢野亮一、川原善浩、立木美保、川東広幸、森谷茂樹、田沢純子(青森県産技セ)、初山慶道(青森県産技セ)、赤田(深澤)朝子(青森県産技セ)、葛西智(青森県産技セ)、田中福代
  • 発表論文等 : Kunihisa M. et al. (2024) Sci. Hort. 334:113297