要約
チャの蒸熱葉の色相角度は、蒸熱時間、蒸熱葉のpH、生葉のクロロフィルaとbの総含有量、生葉のクロロフィルaとbの含有量比の4つの要因によって説明できる。
- キーワード : 緑茶、色沢、色相角度、クロロフィル、pH
- 担当 : 果樹茶業研究部門・茶業研究領域・茶品種育成・生産グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
緑茶の品質指標の中で、緑色の程度は色沢という官能審査項目で評価され、市場価格にも大きな影響を及ぼす。官能審査による色沢の評点と測色機器を用いた計測値を比較すると、色沢と色相角度との間に有意な正の相関が確認されている。また、緑茶においてクロロフィルおよびその誘導体が色相角度を決定する重要な色素であることがわかっている。
クロロフィルおよびその誘導体含有量は、チャの栽培条件および緑茶の製造条件によって大きく変動する。近年、緑色とうま味を高める目的で緑茶の生産において被覆栽培されることが多くなっているが、良好な色沢の緑茶を生産するためには、原料となる生葉の緑色程度だけでなく、製造時の加熱による退色程度についても評価する必要がある。本研究の目的は、緑茶の半製品である荒茶の色相角度を決定する上で重要となる茶の製造工程を見出すこと、および当該工程における茶葉の色相角度に対して寄与の大きい要因を明らかにすることである。
成果の内容・特徴
- 複数品種のチャの新芽を用いて製造工程毎に測色した結果、荒茶の色相角度は蒸熱工程以後の茶葉との相関が高く、荒茶の色相角度を決定する上で蒸熱工程が重要であることがわかる(図1)。
- 露地または被覆栽培した各種品種の荒茶の色相角度は、その原料である生葉の色相角度との相関は低く蒸熱葉との相関が高いことからも、荒茶の色相角度が蒸熱工程で決定づけられることがわかる(図2)。
- 重回帰分析により蒸熱葉の色相角度に影響を与える要因を解析した結果、蒸熱葉の色相角度は、生葉を蒸す時間(蒸熱時間)、蒸熱葉のpH、生葉のクロロフィルaとクロロフィルbの総含有量、生葉のクロロフィルaとbの含有量比(クロロフィルa /クロロフィルb)の4つの要因によって精度よく説明できる(自由度調整済み決定係数:訓練データ0.86、テストデータ0.84)。これら4要因から蒸熱葉の色相角度を求める重回帰式が導き出され、色相角度に対する寄与度は、蒸熱時間>生葉のクロロフィルaとクロロフィルbの総含有量>蒸熱葉のpH>生葉のクロロフィルa/クロロフィルbの順である(表1)。
成果の活用面・留意点
- 表1の重回帰式は蒸熱葉の色相角度を説明するものであり、蒸熱工程以後に茶葉の色相角度は一定程度低下するが、蒸熱葉と荒茶の各々の色相角度には高い正の相関があるため、荒茶まで製造しない蒸熱葉の段階において、その生葉からできる茶の色相角度の相対的な評価ができる。
- 図中の色相角度は、茶葉を同一の粉砕条件で粉砕した粉末について測色した結果である。
- pHは生葉では安定した計測ができないため、蒸熱葉を用いて計測した。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(戦略的プロジェクト研究推進事業:茶葉の低温保管システムの開発と作期拡大を可能とする新品種の育成)
- 研究期間 : 2021~2023年度
- 研究担当者 : 廣野久子、廣野祐平、山下修矢、山田龍太郎
- 発表論文等 : Hirono H. et al. (2024) J. Sci. Food Agric. 10.1002/jsfa.13763