密閉縦型堆肥化装置の発酵熱を活用するための熱交換方法

要約

密閉縦型堆肥化装置の排気配管にプレートフィン式熱交換器を設置することにより、発酵熱を水の加温に利用できる。熱交換器に対して、鉛直方向下方から上方へと排気を導入することにより、ダストによる配管閉塞を回避でき、平均温度62.3°Cの排気から2017MJ/dayの加温出力を得られる。

  • キーワード:密閉縦型堆肥化装置、発酵熱、排気、熱交換、ダスト
  • 担当:畜産研究部門・高度飼養技術研究領域・スマート畜産施設グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

密閉縦型堆肥化装置は国内に広く普及している堆肥化施設である。発酵槽が断熱材で覆われているため、発酵温度が比較的高く、60°C前後の排気発酵熱の有効活用が望まれている。一方で、発酵槽から吹き上げられたダストが排気配管内の結露により泥濘化し、配管閉塞を誘発する場合があり、熱交換器の活用の妨げとなっている。
そこで、本研究では、配管閉塞の発生しない熱交換器設置方法を検討するとともに、密閉縦型堆肥化装置の排気配管に設置された熱交換器による温水生産能力を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 本技術は、密閉縦型堆肥化装置の排気配管およびプレートフィン式熱交換器によって構成される(図1)。熱交換器に対して、鉛直下方から上方へと排気を導入することにより、泥濘化したダストがプレートフィンによりトラップされ、さらにプレートフィンで生じる結露水により洗い流されるため、排気配管の閉塞を回避できる(図2)。
  • 熱交換器に対して、鉛直上方から、あるいは水平方向から排気を導入すると、泥濘化したダストが排気圧によってプレートフィンの内部で目詰まりし、配管閉塞を誘発する(図2)。
  • 熱交換器によりトラップされたダストおよび結露水は、熱交換器の下部に設置された水蓋部より排出される(図1)。
  • 平均温度62.3°C、風速6.9m3/minの排気を熱交換することにより、23.3kWの温水加温出力が得られ、平均温度9.2°Cの冷水から32.2°Cの温水を8.2ton/day生産できる(図3)。
  • ステンレス製プレートフィンを介して熱交換を行うため、温水に排気が混入することはなく、畜舎等の温水洗浄、牛への温水給与、床暖房熱源等に活用できる。

成果の活用面・留意点

  • 温水加温出力は、密閉縦型堆肥化装置の発酵温度、排気温度、加温前水温、加温後水温、温水流量等により変化するため、熱交換器を導入する密閉縦型堆肥化装置の発酵状態や温水使用目的に応じて検討が必要である。
  • 結露水を排出するための水蓋部の水深を20cm程度とすることにより、泥濘化したダストが結露水の排出を妨げにくくなる。
  • 水蓋部から排出される結露水のアンモニア濃度が排水基準を上回った場合には、別途処理が必要となる。

具体的データ

図1 開発した密閉縦型堆肥化装置へのプレートフィン式熱交換器の設置レイアウト,図2 設置レイアウトが熱交換器内部に及ぼす影響 左図:鉛直下方からの排気導入では、配管閉塞が発生しない(本開発技術)
右図:水平方向からの排気導入では、泥濘化したダストによる配管閉塞が発生しやすい,図3 排気と冷水との熱交換による温度変化の一例

その他

  • 予算区分:交付金、農林水産省(地域戦略プロ、イノベ創出強化、先端プロ)
  • 研究期間:2015~2022年度
  • 研究担当者:中久保亮、小島陽一郎、石田三佳、天羽弘一
  • 発表論文等:
    • 中久保ら「除塵システム及び除塵方法」特許第6890318号(2021年5月27日)
    • Kojima Y. el al.(2022)Animal Science J.(査読中)
    • 農研機構(2021)「堆肥発酵熱の回収・利用技術」
      https://youtu.be/i4Tf4h98otY(2021年6月4日)